普段は犬としての能力が疑われるくらい、鈍感なハルさんだけれど、食べ物の匂いには結構敏感だ。
飼い主が食事を始めると、何かおこぼれにあずかれないものかとテーブルの下をウロウロするのが日課である。
テーブルを水面に例えるなら、血の匂いにつられて水面下を蠢く鮫のようなものだろうか。

けれど、鬼の飼い主が食事中にハルさんに食べ物を与えるなんてことはありえない。
ひと通り水中をうろつくと、そのうちにハルさんは回遊を諦め、不貞腐れて(?)、ゴロゴロし始める。
飼い主が食事中に食べ物をもらえることなど、未だかつて経験したことがないというのに、体内に渦巻くコギ族のDNAが、ハルさんを突き動かしてしまうのだろう。
思えば、不憫な犬である。

そんなある日のこと。
飼い主がのんびりと夕食をとっていた、ふと下を見やるとハルさんがいた。
いつものように回遊の儀式を終え、ゴロゴロタイムに突入したはずのハルさんが、である。
ハルさんは、黒い情念の籠もった瞳を爛々と輝かせ、一心不乱に飼い主を見据えていた。
なぜ、このタイミングで飼い主を見つめているのか、全く分からなかったけれど、飼い主を注目することは飼い犬として良い行動に当てはまるのはないか。
そう思い、
「オオ。ヨシヨシ」
と頭を撫でてあげた。
すると。
ハルさんの額にプッシュ式の水道栓が埋め込まれているのか。
そんな錯覚を感じるくらいの大量の水、いや、涎がダアッと床面にこぼれた。

ええっ!?
驚く飼い主。
そんな飼い主の驚愕をよそに、ハルさんのヨダレは止まらない。
全く訳の分からない飼い主は、とりあえず、もう一度ハルさんを「オオ。ヨシヨシ」と褒めてみたが、ヨダレは勢いを増すばかりである。
このままでは、水害(床上浸水)が生じてしまう!
焦る飼い主は、
「ええいっ!止まれ!!」
と裂ぱくの気合とともにハルさんの額をプッシュしてみたが、状況は変わらなかった。
スコスコと間の抜けたような感触を覚えたのは気のせいか。
どうやら、ハルさんの額に埋め込まれた水道栓は既に壊れてしまったようだ。(←大ウソ)
と、こんなマヌケなことを考えているうちにも、ボタボタと流れ落ちるヨダレによって、既に小さな水溜りが出来上がりつつあった。
このままではやばい。
バルコニーに非難させて、被害を最小限(床下浸水)に留めるのが得策か?
それとも、ヨダレを雨漏りに見立てて、ハルさんの口下にタライでも置くほうがいいのか?

そんな絶望的な気分に襲われた飼い主が、ガックリとうなだれた時、自らの足元に小さな茶色い塊が落ちていることに気が付いた。
なんだろう?
気になって床から取り上げてみると、それは小さな粗挽き肉の塊だった。
どうやら、この日の夕食に食べていたピザの食べこぼしが床に落ちてしまっていたらしい。
これはもう捨てるしかないかと思い、しばらく挽肉を見つめていると、アツい視線を感じる。
もちろん、それは、ハルさんの視線であった。
事ここにいたり、ようやく飼い主はハルさんが精根振り絞って(?)絞り出したヨダレの理由に思い当たる。

そう、ハルさんは、床に食べ物が落ちていることに気が付いたものの、無限大の食欲と、盗み食いしてはいけないという思いとの葛藤の狭間で身悶えしながら(ヨダレを垂れ流しつつ)、飼い主の「ヨシ」を待っていたのだ。
我が飼い犬ながら、なんという、立派な犬だろう!!
もちろん、この後、飼い主は感極まって褒めまくり、スペシャルなオヤツ(カンガルー肉)を与えることでハルさんの忍耐に報いたつもりであった。
そこには、飼い主と飼い犬の強い絆が(涎を媒介として)、確かに横たわっていたように思えたのであるが・・・・・・。
しかし、そんな飼い主の信頼を裏切るかのように、昨日、ハルさんはとあるキャンプ場で焼き栗の拾い食いに精を出していたのである。(なんでやねん)
いちからやり直しだな、ハルさん。
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ハルちゃんってどこまでオリコウなんでしょう。。。
リンがそんなにオリコウになる日はやってこないと思いますがちょぴっとずつでも見習いたいものです!!
んー、まずは吠えるのから直さなきゃ(涙)
シュシュもまったく同じように、食卓でご飯をあげたこともないのに、テーブルの下に鎮座して常に何かをまっている…。
そして、うっかり食べこぼしたりしようものなら急いで食う…。
これの繰り返して、これでは与えているのと同じだという事で、うっかり落ちた時は急いで「マテ!!」と叫ぶ。
そしたら、動きは止まるが…
言わなければきっと食べたであろう…
きっと飼い主が気づかない食べこぼしはそっと食べている違いない…
ハルさんの忠誠心に脱帽です。
うちは落ちたものは自分のモノ。だと思っていますよ(笑)
それと食事中にねだるのも大の得意で、じーーっと見られたら、食べられそうなモノをあげてしまいます(^^;)
そんなによだれを振り絞っていても、ヨシを待っていたなんて!
まさにスーパードッグです♪
自らの意思できゅっと口を結んで涎をせき止めていたとは!>違
落ちたものを自分の意思で食べないと言うのは本当に偉いと思います。
なんたは、何か食べ物が落ちてきたら、私が「NO!」と言わなければ食べてしまうと思います(−_−;)
最初から道に転がっているものなどは食べませんが、落ちてきたものは多分食べると思う・・・それがボタンでも。
アイン君なら即胃袋行きですわ。
そしたらいねが当然のように「あ、どうも」と食べていました・・・(号泣)
この時は私もなんてデキた犬なんだと思いましたが・・・。
先日、飼い主の目を盗んで栗拾いをしていた姿には愕然としました。
トモさんも見たはずです。
あの浅ましい姿を!(涙)
★karuさん
忠誠心。
いい言葉ですね。
この時はそんな心があったんでしょうね、きっと・・・・・・(遠い目)。
外での拾い食いもしていなかったんですが(小さい頃はよくしてました)、先日の栗拾い(食い)には唖然としました。
これからは、わざと食べ物を落すなどのトラップに嵌めながら、もういちど性根を叩きなおしてやろうと思っています。
ハルよ・・・・・・首を洗って待っておけ。
★nyankoooooさん
ハルも毎日飽きもせず、じっと飼い主のほうを見つめてきます。
犬はどうしたら食べ物をもらえるか分かるんでしょうね。
ハルはいつも空振りに終わっていますが、その執念だけは褒めてやりたいものです。
けれど、最近では、生活態度がたるんでいるみたいなので(←生活指導の先生か)、ここらでビシッと締めてやらないといけません。
★なんママさん
飼い主が制止すると、落ちてきたものを食べないだろうなとは思っていたのですが、まさか何も言わないうちから飼い主の判断を仰ごうとする犬になっていたとは驚きでした。
家庭犬としてのランクが一段上がったような気がしていたのですが・・・・・・。
今はまたレベル1からやり直しです(涙)。
★アインママさん
確かに、素晴らしかったです。(過去形)
今後は、あらゆる手をつくして、過去の栄光を取り戻さなければ。
★キーツの飼い主さん
「キッチンの床にさりげなーく(それでいて誰もが奴をまたがないと通れないような角度で)横たわっています」
↑
この状況、よく分かります。ウチと全く同じ状況なので笑ってしまいました。
食事中は何も与えないのですが、キッチンでは調理前の食材をあげたりすることがあるので、必ずスタンバッていますね。
そしてジト目で見つめてきます。
その時に、わざと食材を下に落としていました。
食べようとしたら「アカン!」と声をかけ、飼い主の目をみたら「ヨシ!」と食べさせることをしていたので、食べ物を前にしても我慢できる犬になったのでしょう。
ま、今や過去の栄光ですが(涙)。
最後に、当たり前のことなんでしょうけれど、キーツ君って英語の感嘆詞にも反応するのですね。
何だか格好いいです。
★nauさん
そりゃ、食べるでしょう。
私が犬でも食べます。
いや、(ヒト型の)今でも食べるかも(←いやしい)。
まあ、それはともかく。
食べそうになったときにマテをかけて、飼い主の目をみたら褒めて食べさせる、ということを繰り返せば、そのうちに食べなくなると思います。
ハルはこの方法でヨダレドッグになりました(←何かが間違っている)。
けれど、最近の体たらくを見ていると、もう一回、テコ入れが必要ですね。