
伊坂幸太郎氏の同名小説が原作である。
伊坂氏はデビュー作「オーデュボンの祈り」以来、熱心に読んでいる作家である。
そのうえ、ワタクシの愛してやまない大沢たかお氏が主演している。
そんなわけで結構楽しみに出かけていった。
日本映画だからと油断して上映10分前に到着すると、そこには思いのほかたくさんの人がいた。
しかもこの平成の世の中に全席自由席というリスキーなシステムを維持する映画館だったので、まともな席に座れるかずいぶん気を揉んだ。
結局夫が大阪人らしい機動力を発揮して、席を2つ確保してくれた。素敵だ。
それはともかく映画はとても楽しめた。
小説が原作の映画というのは、端折りすぎてわけがわからなくなったり、
うまくまとめられずにとんでもない方向へ話が展開したり、
小説のイメージと違いすぎる登場人物に最後まで入り込めなかったり、
とにかくあまり良い思い出がない。
しかしまあ、言葉と自己の想像力で構築される小説の世界を、
他者による映像と音(台詞)で再構築するのはさぞ難しいことなのだろう。
良い原作だから良い映画になる、そんな安直な話ではないのだ。
映画にするためには何かを諦めなくてはならないし、何かを創り出さなくてはならない。
その選択と創造は原作のない映画を作るより、実はずっと困難なことではないだろうか。
「陽気なギャングが地球を回す」の場合、小説として良さを残したまま、
一編の映画として物語がうまく再構築されていたように思う。
「ロマンはどこだ」
「魂のランクが下がってるわよ」
「嘘は見破れても真実は見えないものさ」
登場するギャングたちの台詞はとても小説的である。というかたぶん原作の台詞そのままのものが多い。
こうした台詞の数々に伊坂氏の素晴らしい才能を感じ、だからこそ彼の小説を読まずにはいられない。
が、小説的な台詞は現実の世界では案外使えないものである。
なんというか、リアルじゃない。そのうえ、台詞にひそむ本来の力さえ失われてしまう。
「ロマンはどこだ」なんて、実際口にしたら、きっとなんともいえず陳腐に響いてしまうことだろう。
しかしこの映画では、小説的な台詞が正しい力とリアルをともない、実に自然に耳に入ってきた。
大沢たかお、鈴木京香、佐藤浩市、松田翔太(←松田龍平の弟らしい)、
4人のギャングたちの演技はほんとうに素晴らしい。
とくに小説的台詞の量が圧倒的に多かった(しかもこの物語最大の決め台詞「ロマンはどこだ」を担う)饗野こと佐藤浩市氏には、今回あらためて役者としての才能を見せつけられた。
まあこんな小難しいことを書きながらも、とにかくカッコよかったのが大沢たかお氏である(←盲目)。
冒頭の銀行襲撃シーンからもう鳥肌がたってしまうほど素敵だった。
小説を読んだのがそうとう昔だったので、筋をまったく忘れていたのもかえってよかったかもしれない。
どんでん返しにいちいち新鮮な気持ちで驚かされたし、登場人物たちも先入観なく受け入れられた。
ちなみに当時の日記によると、原作は2004年3月16日に読了しているらしい。
あの頃はまだ二十代だった(遠い目)。
とにかく、登場人物、ストーリー、すべてがカラッとしていて「痛快」という言葉がよく似合う映画だった。
DVDが出たら買おうと思う。
ん?ハルさんが何かを探している。
「ゴハンはどこだ」
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ゴハン、食べたばっかりなんですけどね……。
今回出番がなかったハルさんに、励ましのテチをお願いします〜。

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なんてステキな方だろうかと常々思っておりますです、ハイ。
この映画はまだ見てないんですよ。
ってゆーか、田舎の映画館では上映してくれんかった(怒)なんてこったい!
伊坂幸太郎さんの原作も読んでないので、ぜひ読んでみたいです。
Mさんとはどーも趣味が合いそうだから、きっと面白いだろう。
いつもコメントありがとうございます。
大沢たかお氏、かっこいいですよね!ヤバイですよね!
ウッチャンとどちらか選べといわれたら悩んで眠れないと思います。
伊坂幸太郎、オススメです。
この映画の原作は続編も出ているので、そちらも合わせてどうぞです〜。