(O・ヘンリ『最後の一葉』)
先日我が家の観葉植物ウンベラータ、通称「美香さん」がこんな状態になってしまった。
もはや人間に癒しをもたらす観葉植物とはいえない哀れな姿である。
植物とはいっても我が家で暮らした年月はハルさんより長い。
見るたびにスー(『最後の一葉』のヒロイン)の気持ちになってぶつぶつと上の台詞をつぶやきため息をつく。
そんな日が数日続いたある日のことである。
とうとう最後の一葉が落ちてしまった。
嵐の中、壁に葉を描いてくれるベールマン老人はいなかった。
嵐じゃなかったからか。
私が病気じゃなかったからか。
侵入はしたもののハルさんがおやつをねだってストーキングしたからか。
まあ実際、壁に葉の絵を描かれても困るのだが。
ところでこの話にはまだ続きがある。
「あぁ、もうだめ……。パピーマミー今までありがとう……(ガクッ)」
ハルさんをスーに仕立てて遊ぶのに飽きた頃、奇跡が起こった。
なんと美香さんからものすごい勢いで葉が生えてきたのである。
「めばえ」
「飛翔」
ようやく重い枷を外されたといった感じで、ニョキニョキと葉が生えてくる。
もはやO・ヘンリというよりジェームズ・ボンドである。トゥモロー・ネバー・ダイなのである。
最後の一葉はあれほど情感を込めて散ったというのに。
***
美香さん?と思った人はMの過去日記帳をどうぞ(Y)。
(過去日記より)
引越を決めて以来リビングの装飾に余念がない夫だが、最近の彼の主なテーマはグリーン(大)である。
大きな鉢に入った観葉植物をリビングの中心に置くと張り切っている。
最近堀江で買った小さなアイビーの鉢植えがウチの雰囲気を著しく向上させたので、グリーン(大)の効果にも期待が高まっている。
そんなわけで、今日も無理矢理仕事を切り上げた夫(←実はすごく忙しい)が梅田へやってきた。
阪急梅田駅に程近い場所に夫お気に入りのグリーンの店があるのだ。
その店内は小洒落たグリーン(大)で埋め尽くされている。グリーン(小)はあまりない。
ちなみに私はグリーン(大)にあまり興味がない。
想像力が乏しいのか、想像できる範囲が狭いのか、大きいものがなんだかピンと来ないのだ。
確かにリビングにグリーン(大)があったらいいなとは思うけれど、では何を置きたいかといわれると、
「んー、なんかええ感じのやつ?」
としかいいようがないくらい具体的なイメージがわかない。
そんなわけで、グリーン(大)に関しては夫にお任せしている。
その夫だが、クワズイモとかモンステラとかウンベラータとかいった大きな葉が数枚バシバシッと生えているやつがお好みである。
パキラやベンジャミンはストレート過ぎておもしろくなく、ゴムの木は昔、好奇心から幹に傷をつけたらゴム汁が溢れてとまらなくなった苦い思い出があるから嫌なんだそうだ。
ところでその店にはちょうどいい大きさのモンステラとウンベラータがあった。
鉢の形が気に入らなかったらしく今回購入は見送られたが、次にいい鉢に入ったモンステラかウンベラータが店に入ってきたら連絡をもらうことにする。
9時も過ぎたので(←張り切りすぎ)、新梅田食堂街にある「ここ家」という鉄板焼きの店に行く。
そこでえのきポン酢などつつきながら、夫とグリーン談義に花が咲く。
「で、結局夫はモンステラちゃんかウンベラータちゃんかどっちが好きなわけ」
疲労と睡眠不足ではやくもホロ酔いの妻が問う。
「ていうか、別にどっちもそんなに好きってわけやなくて」
夫、いまさらな衝撃発言。
「なんていうかな、あの部屋にはそういうのが合うんちゃうかってことやねん。だから、どっちが好きっていわれてもなー…」
「それってつまりモンステラちゃんとウンベラータちゃんは夫にとって叶姉妹ってこと?」
妻、なんだかわからない例えを持ち出す。
「あー、でもそんな感じかな。モンステラが恭子さんで、ウンベラータが美香さん」
夫、それでも乗っかってくれる。優しい人なのである。
「じゃあさ、夫は恭子さんと美香さんどっちがいいのさ」
妻、結局振り出しに戻る。
「恭子さんはさ、なんかちょっと個性が強すぎるんよね。でも美香さんでは個性が弱すぎる。でもまあ、美香さんくらいでちょうどいい気がするかな」
もはや何の話かわからなくなってきたが、とりあえず我が家には美香さんがやってくることになりそうだ。
ありし日の美香さん(左上端)
最後の一葉が散った途端に新たな芽生えがあるとは…。やはり老兵は速やかに去れということなのか!?(チッ、若いモンはこれだから…。)
モンちゃんじゃなくてウンちゃんを選んでしまうあたり、Yさんまだまだ恭子さんのメンズの一員にはなれませんなあ。
しかし、相変わらずおもろいなあ。
かおりんさんのコメントのヨロコビを噛み締めてぼんやり美香さんの成長を見ているうちになんだかウェーブに乗り遅れた感がするMです。
かおりんさんにポチをもらったうえに妹さんにまでコメント頂いちゃって、ホント嬉しいです。ありがとうございます〜。
夫、恭子メンズになれないですかね。英語しゃべれへんしな〜。個人的には社会勉強として一度くらい揉まれてきて欲しいかも、と思っていたり(ニヤリ)。