その日はちびっこギャング宅の地鎮祭であった。
儀式はすぐ終わったので(←私たちが遅刻したともいう)2人と1匹であたりを散歩することにした。
ところで私はその日ひどい二日酔いだった。
渡る世間は鬼ばかりの泉ピン子の気持ちでかろうじて家を出てきたものの、
世界の九割(←姑以外)はどうでもよく、何にたいしても反応が鈍かった。
なのでその時も、ハルさんを連れ歩く夫の後ろを背後霊のようにのっそりついて回っていたわけである。
件の大型犬は民家のガレージで飼われていた。
ボブ(仮名)とかかれた可愛らしい木のプレートを掲げた犬小屋の前をうろうろと歩き回っている。
ハルさんがやってきてようやく三ヶ月、
「ワンコってほんっとうにスバラシイ!アハーン」
新婚夫婦的な絶頂期にあった私たち。
飼い犬というのはもれなく人懐っこいもんだと思い込んでいるところがあった。
要するに油断していたわけである。
なので嬉しくなってつい近づいていった。
ボブ(仮名)も無言で近づいてくる。
しばらくガレージのシャッター越しに見つめあうハルさんとボブ(仮名)。
とくに機嫌が悪そうな感じではない。今から思えば良さそうな感じでもなかったが。
吠えないボブ(仮名)に気をよくして夫も更にハルさんをシャッターに近づけた。
好奇心旺盛で恐れを知らぬ若者世代のハルさんもくんくんと鼻面をガレージに近づける。
そして。
ガブッ!!
ボブ(仮名)はいきなりハルさんの鼻先に咬み付いた。
「キャンキャンキャンキャーン!!」
悲鳴を上げて飛びすさるハルさん(と夫)。
なんとハルさんの鼻先から血がしたたり落ちているではないか。
テリトリーに勝手に鼻先を突っ込んだ若造に、ボブ(仮名)はだまって怒っていたようである。
しかしそんなこといっても目の前で愛犬がぼたぼた血を流すのをみて冷静でいられる筈もない。慌ててかかりつけの動物病院に電話すると、
「 噛まれちゃったんですか〜。とりあえず傷口洗ってくださいね〜。
今からは来れません?え?寝屋川?じゃあ夕方の診療時間にでも来て下さい。
え?そうですねぇ〜。抗生物質とか打ったほうがいいかもしれませんしねぇ。
ねぇホント、ワンちゃんの口の中ってバイキンでいっぱいですもんね!」
最後の一言が飼い主二人をさらに不安にさせる。
「ね、ねぇ夫、この水(車にあった)で傷口洗ってあげて?」
そういって私の差し出したペットボトルを無言で受け取り、おもむろにハルさんの鼻先にジョバーッと水をぶっかける夫。
「ちょ、ちょっとそんな勢いよくかけんでもええって!あぁっ、ハル!(←逃げた)」
冷静に見えて夫も実は結構動揺していたようだ。
余談ではあるが、このとき飛び散った血がワタクシお気に入りのスニーカーに付き、今もって消えることのないシミになっている(怪談)。
その後、夫がおもむろに車のエンジンをかけた。
「さ、妻!車に乗って!!」
「え……なんで?」
「近くの動物病院探すで!」
「えぇ!?夕方宝塚で病院行けばええやんか、獣医さんもそう言うてはったし」
「なに言ってんの!ハルになにかあったらどーすんの!!さ、はやくはやく」
「乗ったら携帯で動物病院探すんやで!」
「……え?」
あの、ワタクシ、何度も申し上げるように二日酔いなんですね?
車も極力乗りたくないし、携帯のちっちゃい文字なんで読めるわけないじゃないですか。
せめて検索は車内じゃないところでお願いできませんか?
「さ!まずは寝屋川市からな!」
「……」
やっぱりハルさんは心配だったりするので、車内で黙って携帯をいじくる私。
さっそくこみ上げるものがあったが、そこは大人の女性らしくふんばった。
おかげでわりとすぐに動物病院がみつかり、ハルさんは無事に抗生物質を打ってもらうことができた。傷口もみてもらったがやはり擦り傷レベルの軽症だったようだ。ボブ(仮名)が加減してくれたらしい。マジ咬みなら本当に穴があくそうだ。ひー、考えるだに恐ろしい。
その後三ヶ月ほど、ハルさんの鼻先にはひっかき傷が残った。
見ているぶんには痛々しいが、本人はいたって元気でとくに体調を崩すこともなかった。
実は一番心配していたのは「犬がキライになるんじゃないか」ということだったが、それもまあドッグランでの暴走を見れば、大丈夫、な気がする。
まあ大型犬が多少苦手ではあるが、噛まれるまえからそういう傾向があったのでここは微妙だ。
とにかく大事に至らなくてほんとうに、ほんとうによかった。
みなさんも、気をつけてくださいね。二日酔いに(←違う)。
大きい犬の無表情には気をつけた方が良いんですね。。。くわばらくわばら・・・。
今は傷残ってないんでしょうか。。女の子の顔に噛みつくなんて!!サップめ〜!(←違)
ウチも気をつけないと。。。
そう言えば遠い昔、近所の無表情犬に近づいていってガブリとやられた記憶がある私・・・。
狂犬病の予防注射なんて受けてないモンね!と言った感じのワンコだったけど。今考えると結構怖いですね(^_^;)
仮名考えるときふと思い浮かんだ名前でしたが、案外的を得ていたのですね。
おかげさまでハルさんの傷はすっかり完治しています。心配していただいてありがとです〜。