
ハルさんを連れて散歩に行くと、様々な人に出会う。
その多くは単にすれ違うのみだけれど、中には犬好きの方もおられて、ハルさんを撫でてくれることがある。
時には、小さな子供を連れている親御さんの場合だってある。
小さな子供の反応は様々だ。
たいていの場合、
「わんわん。わんわん」
と、犬であるハルさんに興味を示してくれる。
だが、十中八九、小さな子供は、ハルさんに近づいてこない。
ハルさんの大きな顔と広く裂けた口が怖いのだろう。

「わんわん。わんわん」
とハルさんを指差すばかりで、その足は地面に根が生えたように動かない。そういえば大あくびしたハルさんの顔を見て泣き出した子供もいた(涙)。
そんな時、見るに見かねた親御さんがハルさんを撫でてくれる。

そのような場合、ハルさんはじっとしていることが多い。
小さな子供を前にして粗相があってはならないと、微かに緊張している私たちの気持ちを読み取っているのかもしれない。
(希望的観測だが)
いずれにせよ、ハルさんがじっとしている(あるいは喜びのペタミミポーズをとっている)ので、親御さんは感心した風に言う。
「おとなしいですねー」
しばらく沈黙が流れる。
何か気の利いた返答はないものかと、その度に考えるのだけれど何も浮かばない。
「・・・・・・えーっと、そ、そうなんですよね」
まあなんと捻りのない応えだろうか。
実に味気ない。
仕方がない(?)ので、おとなしくフセているハルさんを子供のほうにずずいと差し出す。
飼い主の力量不足をハルさんに補ってもらう、姑息な手段である。
すると。
じっとしているハルさんに危険はないと感じるのだろう。
多くの子供は、
「わんわん。わんわん」
と言いながらハルさんを触ってくれる。

ところが。
ここを触れば犬は喜ぶだろう、とか、あそこを撫でれば犬は気持ちよいだろう、といった発想が幼い子供にはない。
自分の最も興味のあるところをピンポイントで突いてくる。
その多くは耳の先端であるが、ときには目を突いてくることだってある。なかなかに油断ならない。
経験や知識がないのだから当たり前なのだけれど、これはハルさんにとって不幸なことである。
「ゲ・・・・・・」
と立ち上がり、嫌そうな顔をしてこちらに助けを求めてくる。
そんな時、大抵の場合は親御さんが「ここをこうやって撫でなさい」と、あるべき犬との接し方をわが子に教える・・・というシーンになる。
「ハル。偉いねー。でも、我慢我慢」
とニッコリ飼い主に微笑まれたハルさんは、また(しぶしぶ)ペタリと動かなくなる。
こうして再び穏やかな時間が流れ出す。
飼い主としても、こういう時のハルさんの大人しさには感心すること仕切りである。ハルさんに対して感謝の気持ちすら湧いてくる。
しかし。
「おとなしいですねー」
と言われた時、何かエスプリの利いた返答はないだろうか・・・・・・、と飼い主は現在も思い悩んでいるのである。

いや本当に。
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