
少し前、ハルさんを連れて三田のアウトレットに行ったときのこと。
三田のアウトレットにハルさんを連れて行くのも、はや3回目になる。
ハルさんもすっかり慣れた様子で、テーブルの下で寛いでいた。

腹ごしらえをした後、ぶらぶらと店を見て回る。
ハルさんが一緒なので、飼い主の片割れが店に入ると、残された者は店の外でハルさんと一緒に帰りを待つことになる。
いずれにせよ、気が済んだら店から出てくることは分かっているので、本でも読みながらのんびり待つ。
けれど、ハルさんは違う。
お店の入り口を見つめたまま動こうとしない。
飼い主が店内に消えていった瞬間から、いま出てくるか、さあ出てくるかとジリジリ待っているのだ。

律儀なのか、それとも気が短いだけなのか、よく分からないけれど、とにかく一瞬たりとも気を緩めることなく待っている。
そんなハルさんとMさんを置いて、いくつかのお店を渡り歩いた後、私はニコンのアウトレットショップに入った。
もちろん、カメラやレンズを買う余裕など全くないので、飾られている商品を空しく見て回るだけである。
そんな中、新しく発売されたマクロレンズ(接写できるレンズ)を見つける。
ハルさんのポートレート風写真を撮るのにも丁度よい長さなので、前から気になっていたレンズである。
ダメもとで、自分のカメラに付けてみてもよいかと店員さんに聞いてみると、快く承諾してくれた。
さて、レンズをカメラに付けてみると、何かを撮ってみたくなるのが人情というものだろう。
はて、何を撮ろうかとあたりを見回してみると、店の入り口でこちらをじっと見つめているハルさんが目に入った。
外で撮ってもよいかと聞いてみると、またもや店員さんは快く承諾してくれたので、うきうきとハルさんのほうに向かう。
「ようやく飼い主が帰ってきた!」
と立ち上がったハルさんを待っていたのは、飼い主が構えるカメラと、そこに装着された新しいレンズだった。(残念)
たちどころに表情を曇らせるハルさん。

カメラを向けられるのはあまり好きではないのだ。
撮影した画像を確認してみても、あまりピンとこない。
今持っているレンズとの違いもよく分からない。
ああでも、このレンズはマクロレンズだった。
もっと近づいて撮影できるはずなのである。
そう思いつき、ハルさんの目をめがけてどんどん近づいていく。

どんどん、ずんずん、ばんばんとハルさんの目が大きくなる。
トップの写真を撮影した時には、レンズの先端がハルさんの目にぶつからんばかりであったらしい。
けれど、さすがはマクロレンズだけあって、今までに経験したことのないような写真が撮れる。
これは面白い。
一人で盛り上がっていると、絶妙なタイミングで店員さんが声をかけてくれた。
「あの、ただいま在庫はないのですが、お取り置きは出来ますので、よろしかったらどうぞ〜」
「あ、そうなんですか!取り・・・」
店員さんの言葉に乗りかかろうとしたその時、背後から覆いかぶさるように別の声が発せられた。
「いーえ、そこまでしていただかなくても全然構わないですよ。ね!」
最後の「ね!」は、明らかに私へ向けられた言葉だった。
彼女(Mさん)の口元は綻んでいたが、その目は笑っていなかった。
店員さんも「これはダメだ」と察したのだろう。
その後、私と店員さんがレンズを元に戻すために、すごすごと店内に戻ったのは言うまでもない・・・・・・。

眼前レンズの脅威に晒されることがなくなったハルさん(ともちろんMさん)にとっては、このうえなくハッピーエンドな一日であった。
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