
やれ鼻が効かない、やれドン臭い、やれ腹黒い・・・・・・。
ハアやれやれだ。
と、犬としての能力(?)に随分な言いがかりをつけられているハルさんであるが、飼い主よりは足が速い(当たり前だ)。
もちろん、人間より足が遅い犬なんて、それはそれで困ったことではある。
けれど、スピードでハルさんに置いていかれた瞬間、心の隅に小さなモヤッとボールが誕生してしまうのもまた事実である。(←なんという心の狭さ!)
幼少の頃から徒競走というものが苦手で、運動会などでは懸命に走っているのに
「Mちゃん!もっとやる気出してほしいわー」
「みんな一生懸命やってるのに」
と、なまじ球技が得意で運動神経がよいと見られがちだったため、いわれのないダメ出しをくらってきたMなどは、ハナからハルさんとのスピード勝負を諦めているフシがある。
けれど、ここで私(Y)まで勝負を捨てては、飼い主のプライドはズタボロだ。

そんな折、生垣などの障害物の周りをぐるぐると走ると、スピードの差が出にくいことに気がついた。
ハルさんに狩られ追われても、すぐに追いつかれることがなくなったのである。
もちろん、最後にはスタミナの差が出て追いつかれるのだが、普通に走るよりは白熱した勝負ができるようになった。
こうしてベンチやトンネルなどの障害物を見かける度にハルさんとの追いかけっこが始まるようになった。

追いかけっこが大好きなハルさんも楽しそうだ。

けれど、もちろん、これはこれでいいことばかりではない。
そのうちにハルさんもこの障害物パターンを学習するようになった。
単純に飼い主の後を追いかけるだけではなくなってきたのだ。
急激に反転して飼い主の行く手を塞いだり、フェイントをかまして

体験していただくとお分かりになるかと思うが、実はこのように真綿でじわじわと首をしめられるような追われ方というのは、精神的にかなり消耗するものである。
まるで自分がサバンナのインパラになったような気分にさせられる。
草食動物の過酷さが身にしみる。
けれど、ここで簡単に追いつかれては飼い主のプライドはどうなる・・・・・・。

そんな悲壮な決意を持ち、全力で逃げきろうとするのだが。
やがて肉体的にも精神的も追い詰められた体が悲鳴を上げ、飼い主は転倒する。
ある意味、ハルさんの毒牙にかかったともいえるだろう。
時には会社帰りにスーツ姿で転倒したこともあった。
派手に手の甲を擦りむいたこともあった。
しかし、ここまで体を張って飼い犬と遊んであげたのだ。
「Y、大丈夫?」という気持ちを込めて飼い主の顔をペロペロと舐めたり、そっと寄り添ったりするのが正しい愛犬のあり方ではないだろうか。
ところが、ハルさんときたら
「にゃはー!こけた!やった、やった!」
とばかりに、大の字で横たわる飼い主(もはやガス欠で動けない)の周りを満面の笑顔でピョンピョンと跳ね回るのである。

全力で遊んであげた結果がこの仕打ちか・・・・・・。
飛び跳ねるハルさんの笑顔が涙で霞んでよく見えなくなってきたことは言うまでもない。
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飼い主が全力で逃げれば逃げるほどハルさんは楽しそうです。
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