
近頃では「バフッ」という声すらなかなか聞けなくなったハルさんだが、たったひとつ、今でも引き金になるブツがある。
それは、掃除機である。
ハルさんは掃除機が動き出すと落ち着き無く周囲をウロウロし始める。
昼寝をしていてもわざわざ起きてくる(←眠れないらしい)。
掃除を終えてコードを巻き取る段になると、ハルさんのテンションはさらに上がる。
くるくると巻き取られるコードが、遠い昔追いかけていた牛の尻尾でも思い出させるのであろうか。
まあとにかく、込み上げる熱い想いとともにハルさんは掃除機に向かって妙なステップを踏む。

ときおり「ハァッ」と甲高い奇声を上げたりもする。その姿はまるで豊穣を祈る古代民族のようである。ヘンな犬だ。
ちなみに「ハアッ」はセーフである。
というか初めて「ハアッ」を聞いたとき、うっかり大笑いしてしまったため、叱るタイミングを失ってしまった。
たいていの場合は「ハァッ」という掛け声(?)とともに平和に掃除が終わるのだが、このプロセスの途中でムダに焦らされたりすると、たまに「バフッ」が出るときがある。
コレは主に私が掃除をしているときに起こる。
夫はそうでもないのだが、私は掃除機の途中で他のことを始めてしまうことがよくある。
飽きっぽいうえに注意力が散漫なので、すぐに他のモノや場所に気を取られてしまうのだ。
そんなときハルさんはもの言わぬ掃除機をじっと見つめてみたり、飼い主の後をストーキングしてみたり、おそらくはイライラしながらコードが巻き取られるのを待っている。

やっと戻ってきてコードをコンセントから引き抜いたとしても、
「あ」
と何かを思いついて、またどこかへ行ってしまうこともあって、そんなときハルさんのイライラは最高潮に達する。
それでもジッと待ち続けてようやくコードが巻き取られる頃にはもう、妙なステップも「ハアッ」もハルさんを満たしてはくれず、結局「バフッ」と濁音交じりの声が出てしまう(←不憫)。
ハルさんにとってはたいへん理不尽な話だが「バフッ」はいかなる理由があろうとアウトである。
がっつり叱られたうえケージに放り込まれ、肝心のコードを巻き取る様子も見えなくなる。
まさに踏んだり蹴ったりである。
飽き性で散漫な性格の飼い主に飼われてしまったことは、ハルさんにとってわりと大きな不幸かもしれなかった。
これではさすがにハルさんが可哀想なので、近頃はなるべく掃除機を途中で投げ出さないよう努力している。
しかし、どうにも植え付いてしまった「バフッ」に対する警戒心のせいで、コードを巻き取るときに「吠えられるものなら吠えてみな?」的な目でハルさんをじっと見つめる癖がついてしまった。
するとハルさんも「そんなトラップにはかかりまへん。ウチをなめたらあかんえ?」的な目で見つめ返してくるようになった。

おかげで今では掃除機を巻き取るときは二人でピリピリと見つめあい、すべて巻き終わると
「ハルゥ〜、おりこぅ〜おぉヨシヨシ」
「(テフテフ、テフテフ)」

(↑ハルさん喜びのペタミーミ)
と「バフッ」を回避した喜びを分かちあう、というパターンが定番化しつつある。
結局、巻き取られるコードをまったく見ないうえ、妙なステップも「ハアッ」もできなくなってしまったわけだが、
この決着について、ハルさんがどう思っているのかは、いまだ謎のままである。
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それにしても、まさかこのような結末を迎えるとは・・・。
もはやハルさんの存在自体が謎のような気もしてきました。
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