その明るい光の下、夫が申込書を書いている隣で、私はハルさんを抱えてぼんやり立っていた。(←結局抱きかかえられて入場)
そのとき、突然スタッフの方に
「ハルちゃん、他のワンちゃんはどうですか?」
と尋ねられる。
えっと、それなりに好き嫌いがありますが、基本的には大丈夫と思います。
大きいコは苦手で、あまり遊ぼうとしません。
トイ・プードルが好きみたいです。
自分から他のワンコに吠え掛かったりするようなことはないと思うのですが、
飼い主がいない状況は初めてのことなので、断言はできません。
ドッグランでは飼い主がいなくなるとぜんぜん遊ばなくなるので、
ココでもそんな感じだと思います。
と、いうようなことが言いたかったのだが、寒いやら、(ハルさんが)重いやら、緊張していたやらでうまくまとまらず、つい
「……普通です」
と答えてしまった。
「えっ……普通っ……て???だ、ダンナさま……!!」
スタッフの方が助けを求めるように夫を見る。
「あぁ。まあ好きだと思いますよ。ドッグランも行きますし」
書類を書きながらモソモソと夫が答える。まだ体調が万全ではないらしい。
「ああ!ドッグラン行かれるんですね!じゃあ大丈夫ですきっとアハハ」
スタッフの方もようやく安心したらしい。無駄に不安にさせ、とても申し訳ないことをした。
その後、ハルさんを迎えに行く夕方まで、かねてからの計画通り、近くで映画を見ることにする。
『earth』という映画を見たいと夫がいうのでチケットを購入した。
しかし哀しいことに上映中、夫の二日酔いが発熱へと発展する。
呼吸が荒くなる。触れた身体もひどく熱い。
『earth』は地球の今を北極から南極まで一気に巡る美しく壮大な作品である。
しかし劇中で温暖化の危機が叫ばれている地球より、今まさに隣で危機的状況に陥っている夫が気になって、映画にはあまり集中できなかった。
結局そのまま夫を家に連れ帰り、またすぐに家を出てハルさんを迎えに行く。片道車で1時間弱、無駄な往復とはいえ仕方がない。
あたりはぐんぐん暗くなる。雪もどんどん激しくなる。
TDSPに着いたときには、(精神的に)息も絶え絶えであった。
しかしきっとハルさんが満面の笑みで迎えてくれるに違いない。そう思うと力も湧いてくる。
建物内で待っていると、スタッフの方がハルさんを抱えて戻ってきた。
しかしハルさんは私を一瞥しただけで、まったくのノーリアクションであった。
※イメージ図です
「ぅえっ!?なぜ??こんな吹雪の中、泣きながら運転してきたワタクシにその態度!?」
と叫びたかったが、スタッフの方に
「お迎えには、ダンナ様いらっしゃらないんですね」
といわれて
「いろいろありまして」
というのが精一杯であった。
スタッフの方も大事な最初の「お試しお預かり」の結果発表時に、トンチンカンな妻だけがやって来たことで、また不安を掻き立てられていたのかもしれない。重ね重ね申し訳なかった。
ちなみにハルさんは1分ほどしてようやく
「あ、飼い主」
といった感じで喜びの表現をしてくれ、開きかけた傷口が少し閉じる。
ハルさんもこの難局を乗り切るために色々とスイッチを切っていたのかもしれない。
ところで「お試しお預かり」中のハルさんだが、
「え〜、まずですね、やはり飼い主さんがいなくなってからは、
ヒュンヒュン鳴いてとても不安そうな様子でした」
やっぱり。ウワサ通りです。
※イメージ図です
「犬舎の中でも動こうとせず、他のワンちゃんにもまったく挨拶に行きませんでした」
あらー……すみません。
「他のワンちゃんが来ても知らんふりで、ときにはイーッと怒る様子も見られました」
吠えたりは
「そこまではしてません」
あぁそうですか。よかった。
「人にはそれなりに寄って来てくれましたが、まあ助けを求めているという感じですね」
なるほど。
「このまま終わるかと思ったんですが、一度外のドッグランに出したら、突然元気いっぱいに走り出しました」
え!?マジっすか?
「はい。突然のことでこちらもビックリしましたが、
他のワンちゃんともおっかけっこをしたり、楽しそうでした」
へぇ〜。
※イメージ図です
「でも犬舎の扉を開けて呼んだらすぐに戻ってきました。珍しいタイプですね」
あきらめの良いのが取り柄なんですウフー(←ちょっと調子に乗ってる)
「長期のお泊りは今の段階では難しいかもしれませんが、単発なら大丈夫だと思います。
次回は匂いのついたものを一緒に持ってきていただくと良いですね」
ということで、ハルさんはなんとか「お試しお預かり」をクリアした。
犬も飼い主も相当に疲弊した一日であった。
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ハルさんも色々と大変だったようですが、何とかお試し預かりは乗り越えることができました。
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