出発当日、私はサツマイモとミシンのことで頭がいっぱいであった。
実家へ帰るとなると、持って行かなくてはならないものと、持って帰らなくてはならないものが、いろいろと出てくるのは私だけであろうか。
また、そのミッションの成功率は、たいていの場合、50%前後である。
つまり何かを持っていくのを忘れるし、何かを持って帰るのも忘れる(←ダメな奴)。

ところでその日、私はなんとしてもサツマイモとミシンを実家に持ち帰りたかった。
ミシンは実家で使うというし、サツマイモはジャガイモとの密約が交わされている。
(先日、知人からサツマイモを箱で頂いたのだが、夫がサツマイモをあまり好んで食べないため、どうしても消費が追いつかず、途方に暮れていた私と母親の間で物々交換が成立した)
ミシンは、ミッションの失敗がもう2度も続いているし、サツマイモは生もの(?)で、失敗は許されない。
とにかく何より先にミシンとサツマイモの準備をする。
それでようやく安心して自分たちの準備も整えて実家へ向かった。

そして実家でたらふく食べて、たらふく飲む。
ハルさんも、オヤツのガードが甘いウチの両親に会えて、ウキウキと楽しそうであった。
やがて
「そろそろ寝よか」
「そやな」
「ハルも寝るか、ハル、ハウス!……ってアレ?」
「なぁ、ハウスは……?」
「……あぁ〜……すっかり忘れてた……」
ハルさんお泊り時には欠かしたことのない、必須アイテムであるハウスのことを、ミシンとサツマイモにかまけて完全に忘れていた。
ハルさんは所在なさげにいつもハウスが置かれているはずの場所をウロウロしている。その顔は途方にくれていた。
「……どーしよ……」
「んー、ま、大丈夫なんちゃう?マットはあるし」
「そ、そうやんな」
「そうやって」
「いや、ダメだ」
突然、強い声が降ってきた。
「ハルが安心できる場所を忘れてくるなんてオマエは。
ハルがかわいそうじゃないか」
「ウッ……おとーさん……」
私が何を忘れてきても何を忘れていってもいつもは決して責めない父親が、ハッキリと私を責めていた。
「で、でも、もう夜中やし、しょーがないやん……?」
「仕方がない。おとーさんがここでハルと寝て」
「また!?それはもういいって、ハルはいつもひとりで寝てるんやから」
「……」
不甲斐ない娘に呆れたのか、ハルさんと一緒に寝られないのが不服なのか、父親はだまって物置へと消えていった。しばらくして帰ってくると、父親はダンボール(有田みかん)を抱えていた。
「さあハル、これでとりあえずハウス作ってあげるからな」
こうしてハルさんの即席ハウス(有田みかん)が完成した。
一応マットを敷いて、ソレっぽくしてみる。
「ハル?ハウス!」
すると案外あっさりと中に入ってくれる。

しかし、やはり狭いらしく、すぐに出てきてしまう。
「ダメかー」
「奥行きがないのがアカンのやろな」
「中で方向転換できひんとな」
「そもそも身体全部入ってへんもん」
「トグロも巻かれへんみたいやし」
「高さは悪くないねんけどなー」
元は自分たちの過失であることを棚にあげ、言いたい放題の飼い主2人。
その言葉に、父親はまた黙って奥へと消えていく。
やがて戻ってくると、今度はダンボール(また有田みかん)とガムテープを抱えていた。
「さあハル、コレとコレ、つないでやるからな。広いぞー」
そうして完成したセカンドハウス(有田みかんU)を、ハルさんはとても気に入ったらしく、中ですっかり落ち着いた。

「おぉう、これエエや〜ん。
もう次からハウス持ってこなくていいねえ、ハル?」
ウキウキと私がいうと、
「何をいうか。
ハルは慣れたハウスの方がええに決まってるやろ。
まったくオマエは、次からはきちんと持ってくるように」
結局最後まで責められっぱなしなのであった。

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