まあ人の社会で生活する以上、仕方のないことだ。
ちなみに制約には
(1)吠えない
(2)ソファやテーブルに乗らない(手をかけるのもダメ)
(3)リビング以外の部屋には入らない
といったものがある。

(3)については、もともとイタズラ可能領域を狭めたいがための制約だったが、今となっては入っても何もしない(フードの袋が床に置いてあっても口をつけないほど)ので、
「飼い主に見つからなければ良い。うまくやんなさい」
というあやふやなスタンスになっている。
ところでこれらの制約は、実はいずれもハルさんの自己主張の手段を奪うものである。
最初からそのつもりがあったわけではないが、結果としてそういうことになってしまった。
それでもハルさんはその制約内で、日々、主張手段を編み出している。
がんばり屋さんなのである。

たとえばトイレ排泄時。
仔犬の頃からのトイレトレーニングの習慣が今も残っていて、トイレで排泄すればオヤツを与えることにしている。
しかし近頃は飼い主の注意力もすっかり散漫になってしまって、排泄に気づかないことがよくある。
オヤツが懸かっているハルさんとしては、早急に自らの成果物に気づいて欲しいところだ。

そんなとき飼い主が床でゴロゴロしていれば、ハルさんはピタッと寄り添いに来る。
たいていは飼い主の身体の一部を踏むようにして座り込む。
足にボボ尻が乗っかったりして、とても可愛い。
さすが腹黒コギ(?)、自分の武器の使い方をよくわかっている。
ハルさんが1歳くらいまでは、珍しく甘えてきてくれているのだと思って
「まあハルちゃんたら、あ・ま・え・たちゃ〜ん(ハート)」
と喜んで撫で回していたが、そうやって寄り添って来てくれるのがほぼ排泄時またはゴハン前のみと気づいてから、足の上に乗っかってくるボボ毛をしごきながらも、一抹の寂しさを覚えるようになった。

ところで飼い主はいつも床にいるとは限らない。ソファの上に寝転んでいる場合もある。
こうなるとソファに手をかけることすら許されないハルさんには苦しい展開である。
悩んだ挙句(かどうかはわからないが)、ハルさんはアゴを乗せてみることにしたらしい。
真摯な瞳で飼い主を見つめてもみた。これもこれでなかなかに可愛い(←思うツボ)。
しかしソファの上にいる時はたいてい、眠りかかっているか、本を読んでいるか、ニンテンドーDSに勤しんでいるかなので、アゴを載せたくらいではハルさんに気づかないことが多い。

そこでハルさんはさらに一歩踏み込んで、飼い主にモノを投げつけるわけである。
床より高い場所に存在権のないハルさんにとっては苦渋の決断であった(と思うがどうだろう)。
投げるのはたいてい、しがみ終わってヤな感じに湿った軍手か、オヤツをほじりだした後のヨダレまみれのコングである。
当たっても痛くはないが、まあ気分の良いものではない。
しかもけっこう的確にボディに投げつけてくる。
あんなに短い足で軽快にステップを踏み、うまく勢いをつけるのだ。ヘンなところで才能がある。

しかしこんな攻撃に屈するほど飼い主は甘くはない。
ワタクシ今は気分が乗りません。
アナタもそんな能力を発達させるくらいなら、
散歩中に溝にハマるのをなんとかしたらいかがですか。
というようなことを言いながらハルさんに軍手あるいはコングを投げ返し、再びソファの上でゴロゴロする。
要求は一度通るとあとが面倒なのである。
何事も飼い主のタイミングで行わなくてはならないのである。
そんなわけで、たいへんな知恵と労力を使ったハルさんの主張は、結局受け入れられないのであった。

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