2007年11月05日

涎の絆(Y)

ハルさんはいつだってお腹をすかせている。
普段は犬としての能力が疑われるくらい、鈍感なハルさんだけれど、食べ物の匂いには結構敏感だ。
飼い主が食事を始めると、何かおこぼれにあずかれないものかとテーブルの下をウロウロするのが日課である。
テーブルを水面に例えるなら、血の匂いにつられて水面下を蠢く鮫のようなものだろうか。

鮫がやってきました

けれど、鬼の飼い主が食事中にハルさんに食べ物を与えるなんてことはありえない。
ひと通り水中をうろつくと、そのうちにハルさんは回遊を諦め、不貞腐れて(?)、ゴロゴロし始める。
飼い主が食事中に食べ物をもらえることなど、未だかつて経験したことがないというのに、体内に渦巻くコギ族のDNAが、ハルさんを突き動かしてしまうのだろう。
思えば、不憫な犬である。

いつもだいたいこんな感じです

そんなある日のこと。
飼い主がのんびりと夕食をとっていた、ふと下を見やるとハルさんがいた。
いつものように回遊の儀式を終え、ゴロゴロタイムに突入したはずのハルさんが、である。
ハルさんは、黒い情念の籠もった瞳を爛々と輝かせ、一心不乱に飼い主を見据えていた。
なぜ、このタイミングで飼い主を見つめているのか、全く分からなかったけれど、飼い主を注目することは飼い犬として良い行動に当てはまるのはないか。
そう思い、

「オオ。ヨシヨシ」

と頭を撫でてあげた。

すると。

ハルさんの額にプッシュ式の水道栓が埋め込まれているのか。
そんな錯覚を感じるくらいの大量の水、いや、涎がダアッと床面にこぼれた。

キラリと光るものが・・・

ええっ!?

驚く飼い主。

そんな飼い主の驚愕をよそに、ハルさんのヨダレは止まらない。

全く訳の分からない飼い主は、とりあえず、もう一度ハルさんを「オオ。ヨシヨシ」と褒めてみたが、ヨダレは勢いを増すばかりである。

このままでは、水害(床上浸水)が生じてしまう!
焦る飼い主は、

「ええいっ!止まれ!!」

と裂ぱくの気合とともにハルさんの額をプッシュしてみたが、状況は変わらなかった。
スコスコと間の抜けたような感触を覚えたのは気のせいか。
どうやら、ハルさんの額に埋め込まれた水道栓は既に壊れてしまったようだ。(←大ウソ)

と、こんなマヌケなことを考えているうちにも、ボタボタと流れ落ちるヨダレによって、既に小さな水溜りが出来上がりつつあった。

このままではやばい。
バルコニーに非難させて、被害を最小限(床下浸水)に留めるのが得策か?
それとも、ヨダレを雨漏りに見立てて、ハルさんの口下にタライでも置くほうがいいのか?

タライ買ってきて!

そんな絶望的な気分に襲われた飼い主が、ガックリとうなだれた時、自らの足元に小さな茶色い塊が落ちていることに気が付いた。

なんだろう?
気になって床から取り上げてみると、それは小さな粗挽き肉の塊だった。
どうやら、この日の夕食に食べていたピザの食べこぼしが床に落ちてしまっていたらしい。

これはもう捨てるしかないかと思い、しばらく挽肉を見つめていると、アツい視線を感じる。
もちろん、それは、ハルさんの視線であった。
事ここにいたり、ようやく飼い主はハルさんが精根振り絞って(?)絞り出したヨダレの理由に思い当たる。

何事にも理由があるのです!

そう、ハルさんは、床に食べ物が落ちていることに気が付いたものの、無限大の食欲と、盗み食いしてはいけないという思いとの葛藤の狭間で身悶えしながら(ヨダレを垂れ流しつつ)、飼い主の「ヨシ」を待っていたのだ。

我が飼い犬ながら、なんという、立派な犬だろう!!

もちろん、この後、飼い主は感極まって褒めまくり、スペシャルなオヤツ(カンガルー肉)を与えることでハルさんの忍耐に報いたつもりであった。
そこには、飼い主と飼い犬の強い絆が(涎を媒介として)、確かに横たわっていたように思えたのであるが・・・・・・。

しかし、そんな飼い主の信頼を裏切るかのように、昨日、ハルさんはとあるキャンプ場で焼き栗の拾い食いに精を出していたのである。(なんでやねん)

いちからやり直しだな、ハルさん。

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posted by 飼い主YとM at 22:56| 兵庫 ????| Comment(8) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする