2007年09月27日

たびいぬが往く−天候、逃亡、高感度リモコン−(Y)

天候、それは、犬連れ旅行の命運を決定してしまう旅の要素である。
現実的に、犬を連れて入ることのできる建物は殆んど存在しないので、旅先で雨が降られると完全に身動きが取れなくなってしまう。
こうなると、飼い主に残された道は、意を決して愛犬もろとも雨中に身を投げ出すことだけだ。(合掌)

これは涎雨

わんわんパラダイスに宿泊した日、テレビの天気予報は、明日が雨であることを告げていた。
それどころか、予報がなされるよりも早く、既に夜空はすっぽりと雨雲に覆われていた。
窓の外を見やると、暗闇を照らすホテルの明かりに雨筋がいくつも浮かんでいた。
もはや、明日は覚悟を決めて雨中にダイブするしかないのか。
悲壮な覚悟を固めつつ、こんなことを聞かれても答えに困るだろうな、と思いながら、妻Mにありきたりな問いを投げかけてみる。

「なあ、明日雨やって。どないしよか?」

「えー?それって天気予報が言うてるだけやんね。
 大丈夫!夫がいる限り雨なんて降らへんって」

へ・・・・・・?
唖然とする私に向かい、妻Mは自信たっぷりに続ける。

「今日の白川郷やって天気悪いと言われとったけど、暑いくらいの陽気やったやんか」

シャコタンに暑さは厳禁です

「全然大丈夫やって。私、夫の気圧を上げる力だけは信じてるから」

何だか褒められているのかどうか分からなくなってきたので、問うてみる。

だけって・・・。それだけ?他にないん!?」

「い、いやー。そ、そ、そんなことないと思うよ。他にはえっと・・・・・・(ゴニョゴニョ)」

結局、ヘクトパスカル以外に妻Mがリスペクト(←ややこしい)していることは何一つ聞けずじまいであった。
ただただ、私が持つ気圧の力(なんだそれ)に全幅の信頼を置いていることが判明したのみであった。

まあ、考えても栓のないことでもあるし、いい加減にアルコールが回ってきたため、眠ることにした。

雨音を聞きながら。


翌朝。

ハルさんも結構よく寝ていたようだ

やはり、というべきなのだろうか。

外は快晴だった。

さすがヘクティー

我ながら自分の力が恐ろしい。(←馬鹿丸出し)

朝食を摂った後、昨日は暗くてよく分からなかったホテルの周囲を散策してみる。

すると、敷地内に川が流れていた。

イヤッホー!

短足族のハルさんでも余裕で入れそうな、浅い川である。
さすがに上流だけあって流れは速かったけれど、ハルさんは喜び勇んで入水していた。

あら、浅いじゃない

天気がよいだけに気持ちよさそうである。
我慢できなくなった飼い主も、事前にしっかり準備しておいた川遊び用の靴を履いて入水してみた。

ところが、この水が物凄く冷たいのである。
5秒とは浸かっていられないほど、氷のように冷たい。
さすがは、山深い場所を流れる川だけのことはある。

けれど、ハルさんは毛皮を身にまとっているからなのか、水の冷たさをあまり苦にしない様子だ。

きゃっほう

何だか悔しいので、またまたハルさんを罠に嵌めようと、上流へ、上流へとハルさんをおびき寄せる。

その手には乗らないわ

けれど、過去にあんなことや、こんなことがあって、水際における飼い主への不信感を募らせるハルさんは、なかなかノッてこない。

不穏な空気を察知したのか、私が近づくと逃げ出した。

手の動きからして怪しい

逃げて、

ヤバイヤバイ

逃げて、

ヤバイヤバイヤバイ

逃げる。

食べました!(ソフトバンク風)

けれど、結局捕まる。

運命って残酷

残念ながら、ハルさんのケツ毛には高感度のリモコンが装着されているため、飼い主の「フセ!」とか「マテ!」には従わざるを得ないのだ。
嗚呼、可哀相に。(←心がこもってない)

けれど、これからも続く旅行の最中、ハルさんと微妙な距離感を抱えて一緒に行動するのも何だか気が引ける。
そんなわけで、ごくごく浅場にハルさんをそっとおろしてあげることにした。

けれど、もう既に不信感で一杯のハルさんは慌てて逃げ出した。

やっぱり信用できないの

まあ、それもこれも飼い主の今までの悪行のせいなのだろう。

最後は、まるでご機嫌取りをするように川で一緒に遊び、川を出る。

仮面主従

川を上がると、敷地内にドッグランまで存在していたことが判明したので、早速行ってみる。

よく考えてみれば、今回の旅行3日目にして、ハルさんが広い場所でノーリードになったのは初めてのことである。
ドッグラン内には思いのほかたくさんの犬がいて、その殆どがハルさんの許容量を超えるレトリーバー系の犬たちであった。

しかし。
近頃、ヅカのドッグランではあまり走らなくなったハルさんであるが、このときよっぽど「走り」に飢えていたのか、(ハルさんにしてみれば)大きな犬たちを気にすることなく、暴走していた。

飼い主も驚く暴走っぷり

近年では稀に見るくらいのハルさんの暴走ぶりに、他の飼い主さん達からも驚嘆の声が上がっていた。

楽しそうです

もちろん、当然の帰結として、ラブラドールに狩られていたけれど。

風になる!

「そんなの関係ねえ」とばかりに、その暴走っぷりはしばらくの間続いた。

まだまだ!

ドッグラン内には木陰も多く、気のいい犬たちばかりであったので、私たちもハルさんも心地よく過ごすことができた。

御年14歳のパールちゃん

最後は、ホテルのエントランスで「いわゆる記念写真」を撮影し、わんわんパラダイスを後にする。

何だか愛犬みたいだ

旅、3日目が始まった。

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2007年09月24日

たびいぬが往く−茶番、おイタ、トレーニング−(Y)

結局、白川郷では犬連れの方を全く見かけることはなかった。
建物内に入ることが出来ないので、ここもやはり犬連れ旅に向いたところではないのだろう。
長浜とは異なり、酔っ払った人々に出会うこともなく、この日の宿泊場所へと向かう。

なお、白川郷では、道端の用水路の中を鱒が泳いでいる。

旨そう・・・

ここで一番感動したのは、郷を流れる水の清冽さであったように思う。
(鱒を食べたかっただけだろうという突っ込みは受けつけておりません)

ところで、本日の宿、「高山わんわんパラダイスホテル」に到着した頃には日もとっぷりと暮れていた。どうやら取るべきルートを誤ったらしい。えらい山道であった。

すでに第一回目の夕食が始まっていたので、とりあえずお風呂に入ることにする。
ここのお風呂はホテル本館とは少し離れた場所に位置しているが、全て家族風呂である。
夫婦で旅行する際、浴場が男湯、女湯と別れていないのはとてもありがたい。
さらに、追加料金を支払えば、犬も一緒に入ることができるという。

ハルさんは大して汚れていなかったのだが、「せっかくだから」「記念に」という理由をつけて一緒に入ることにした。(ホテル側の戦略にはめられたともいう)

浴場はかなり広く、4人程度の家族が使うのに丁度いいサイズだった。
シャンプーが嫌いなハルさんは、「いつ洗われるのだろう?」という恐怖に怯えながら浴場の中をウロウロしていた。

逃げ場がないんじゃ!?

ハルさんが面白くなさそうなので、

「ハルちゃーん!助けてー!!溺れるーぅ!!!」

ブクブク・・・・・・。

と、浴槽で溺れるフリをしてみたところ、さすが忠犬ハルさんである。
飼い主を助けに来るフリをしてくれた。

もういい加減にしてよね
崩壊寸前のカップルか。

そんな茶番劇を経て、部屋に戻ると、夕食の時間がやってきていた。

さすがはホテルだけあって、レストランは立派なものである。

土曜日だけあってほぼ満席だった

雰囲気はバツグン、食事も豪華である。

燦然と輝く飛騨牛

「せっかくだから」「記念に」というわけで、ハルさんにもササミボイルなどをサービスしてみた。

目がもうイッてます

そして、ここは飛騨高山。

白川郷にも

飛騨といえば飛騨牛、飛騨牛といえば飛騨(当たり前だ)である。
まずは飛騨牛のしゃぶしゃぶ、飛騨牛の造りを堪能したのち、いよいよ、飛騨牛のステーキが運ばれてきた。

旅とは食べることです

飛騨牛のしゃぶしゃぶだけだと思っていた妻Mは「ええっ!?ステーキまで?」と驚愕の表情を見せる。
それはそうだろう。
何しろ、こっそりと「飛騨牛の石焼ステーキコース」を注文していたのだから。(悪)
旅行計画を私(Y)に一任している以上、これくらいのおイタ(可愛く言ってみた)は許していただきたいものである。

石の上で焼いてみる

それはともかく、想像していた以上に飛騨牛は美味しかった。
早々にササミボイルを平らげ、ジト目で飼い主のほうを見やるハルさんがどう思っていたのかは知らないが、飼い主二人はたらふくビールも飲んで、大満足の夕食であった。

飛騨牛と鳥ササミでは差がありすぎと違いますのん

丸々と膨れたお腹を抱えてレストランを出る。
すると、客室へ戻る途中に、「愛犬サロン」と書かれた大きな扉を発見した。
扉の大きさから察するに、中はかなり広そうだ。
この中はノーリードOKとも書かれている。

すると、この扉の中には室内ドッグランが広がっており、たくさんの犬たちがワフワフと戯れているということだろうか。
こ、これこそ、まさにワンワンパラダイスではないか。

ほろ酔いの飼い主たちは、期待感に胸を膨らませ、

「カモン!ワンワン!!」

と勢いよく扉を開け放った。

が。
中には誰もいなかった。
人っ子ひとり、犬っこいっぴきいなかった。

ガラン。

ハルさんのテチテチという足音が、空しく部屋中にこだまするのみだった。

と、そのとき、扉がギギッと音を立てて開いた。

いよいよ、ワンワンがやってきたのか!?

と、期待感に満ちて扉のほうを見やると、親子連れ(のみ)だった。

それでも、ハルさんは淋しかったのか、親子連れのほうへと駆け寄り愛想を振りまいていた。

どこの犬?

小さな子供のほうも、ハルさんのことを大層気にいってくれたらしく、ハルさんに「ゴロン」をさせたり、

ハイハイ何でもしますよ

インリンのトレーニングを行ったりしていた。(私たちは何も言ってませんよ!念のため)

これは・・・どうだろう?

すっかり打ち解けたハルさんと子供は、まるで昔からずっと一緒に暮らしていたのかのように寄り添っていた。

ええ顔してます

しまいには、

「○○○(この子が飼っている犬)よりハルちゃんのほうがいい・・・・・・」

と、ボソッとつぶやいていた、なんてことは、言わない約束だ。(←言うとる!)

その後、部屋に帰り、テレビをつけて天気予報を見てみたところ、明日は雨との予報だった。

雨か・・・・・・。

ふと外の音に耳を澄ますと、シトシトと雨の降る音がしていた。

つづく。

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2007年09月21日

たびいぬが往く−山内、遺産、ダンプカー−(M)

というわけで翌日。
目覚めた夫が気圧を上げはじめたせいか、空は徐々に明るくなっていく。

実は今回の旅行は、毎日違う県で遊ぶことになっている。
なぜといわれると困るのだが、そんなわけで今日も結構な距離を移動する。

途中、北陸道の徳光ハイウェイオアシスに立ち寄る。

ハルあざらしさんの故郷、海がもうすぐだ

ここは以前、社員旅行で訪れたことがある場所である。
誰にそそのかされたのか、荒波に浮かぶ堤防に立つ社長と部長の姿を遠くから見ていた平社員たちは、

「山内くん、いったいどういうことかね」
「川田社長、僕はもうあなたの言うなりにはならない」
「家族はどうなってもいいのか」
「……僕は家族に胸を張っていたい。今から警察に行きます」
「山内……貴様……」

ボグッ(←鈍器で殴られた音)
ザッパーン(←海に落ちた音)

と、勝手にサスペンス劇場を作り上げて楽しんでいた。
まあ良い思い出である。

ふるさとへ向かうハルあざらし

その後、到着した先は白川郷である。
合掌造り集落として、ユネスコの世界遺産に登録されているところだ。

何だか暑いね

この日は土曜日ということもあって、結構なにぎわいであった。
天気もすっかり快晴である。というか晴れすぎて暑い。
なので夫に、

「ヘクティー(←ヘクトパスカルの愛称)、暑い。もう少し気圧落としてくんない?」

というと、またイヤそうな顔をして撮影に行ってしまった。

収穫目前の田が広がる

白川郷は世界遺産だけあって、ひとつひとつの家が大切に保存されており、
周囲ののどかな風景ともあいまって、とても風情がある。
あたりを眺めながら歩いているだけで、とてもゆったりした気持ちになる。
ただ、さすが世界に名だたる観光地だけあって

ココ!ココにカメラ置いて!
それからソコに座って!さあ、記念撮影を!!

行きかう人々に目を向けるボボさん(涙)

みたいなベンチとカメラ置き台があったりして、少し前のめっている場所もある。油断ならない。

ところで時刻はそろそろお昼どき、気分は俄然おそばである。
というわけで白川村で唯一ワンコを連れて食事ができると(夫が)いう店へ向かう。

しかし悲しいことに、外のテーブル横には猫がいた。
猫はとても機嫌が悪そうだった。
そしてあきらかに能天気な顔をした足の短い生き物を警戒していた。
彼(あるいは彼女)が看板猫かどうかは謎のままだったが、
とにかく私たち(主にハルさん)を歓迎するつもりは微塵もなく、
さらには外のテーブル横の居場所を譲る気もないようであった。
しかしワンコ連れは外でしか食事を許されていない。
すごすごと立ち去るしかないのであった。

私の蕎麦は?

途方に暮れつつも、とにかく一通り巡ってみようと歩いていると、
奥まったところにつり橋が見えた。
川を挟んだ反対側にも白川郷が広がっているらしい。白川郷、案外広い。

ハルさんと一緒につり橋を渡る。
人が多すぎるせいか、はしゃぐ大きな子供がいるのか、とにかくとても揺れる。
後で写真を見てみると、やっぱり人が渡りすぎなのであった。

100人乗ってもダイジョウブ!

ハルさんはつり橋の高さも揺れも、あまり気にならないようであった。
シャコタンの彼女は、いつもほぼ二次元の世界に生きている。案外、高低差は認識できないのかもしれない。
しかし、高さも揺れもとても気になる過敏な3D対応(?)の夫は、

「ちょっ、い今、話しかけんといて」

と言ったきり、すっかり無口になっていた。

ハルさんのシャコタンが羨ましかったようだ

しかしまあがんばってつり橋を渡ったかいがあって、川の向こう岸に、外でも食事できる店を発見する。

日よけの草越しに合掌造りを

暑さと空腹でクタクタになっていたので、この幸運はとてもありがたい。

ようやくめぐり合えた蕎麦

涼しい日陰で念願の手打ちそばを心ゆくまで味わう。

だから、私の蕎麦は?

その後、傾斜した川原の芝生でハルさんともども少し遊び、

ちょっと遊ぼうか

ハルさんのダンプカーみたいな勇姿を見て満足し、

これは犬じゃない

白川郷を後にする。

私のゴハンは?

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2007年09月19日

たびいぬが往く−気圧、荒波、火いら寿−(M)

色々あった長浜を後にし、福井県へ突入する。
だんだん雲行きが怪しくなってくるが、そこは夫が持ち前の晴れ男っぷりを発揮してそれなりに持ちこたえてくれるだろうとタカをくくる(←楽観的)。

ということで海沿いの道を走り、MAREというカフェに入る。
この店は抜群のロケーションにあり、雰囲気も開放的でどこか南のリゾートのようだ。
こちらはテラス席のみワンコOKである。店の方がテーブルを運んでくれた。
テラス席の床はまだ濡れている。先ほどまで雨が降っていたようである。

出張るハルさん

夫の天気男力はたいしたものだ。
彼の周囲は常に気圧が高いのかもしれない。
賛嘆と敬意を込めて

「ミスタ・ヘクトパスカル?」

と呼んでみたが、
夫はイヤそうな顔で、カメラを持って景色の撮影に行ってしまった。
ハルさんが「ボボやボボや」としつこく呼ばれて、玄関のほうへ立ち去る時の表情に似ていた。

荒波リゾート

ここはとにかく眺めが素晴らしい。
ウッドデッキが組まれた南国リゾート的テラス席からは台風直下の日本海の荒波が見える。

ドドーン、ザッパーン

遠くには松の木が見え、振り返ると断崖がある。

背後は切り立っている。日本海だけに

オホーツク海に水上コテージが浮いているような、なんともいえない複雑な様相ではあるが、海から吹く風は心地よく、ケーキを食べて暖かいコーヒーを飲んでいると、とても穏やかな気持ちになる。

コーヒーシフォンもおいしかったです

その後、本日の宿へ到着する。
意外にもMAREから数百メートルのところにあり、目的地を入力した途端、カーナビが「ルートガイドをを終了します」と言った。

こちらは純和風のお宿である。
ワンコ歓迎というわけではなく、基本的なしつけができていればまあ一緒でもいいですよ、というスタンスらしい。
そのわりには、だいたいの場所に犬を連れて行くことができたりする。食事も一緒に取ることができる。
まあ平日で宿泊客が私たちだけだったからかもしれない。そこのところはよくわからない。

後ろ足がくつろいでいる

食事の部屋では、ハルさんはカフェマット(的なバスタオル)の上に係留される。ヨダレ防止のためである。
人が食べているのを見ても、別にヨダレは出ないのだが、ウロウロされても困るのでまあ一応つないでおく。

なんでですのん

まずは日本酒が運ばれてくる。
いきなり有無をいわさず日本酒が運ばれてくるとは、なかなか珍しいお宿だと思っていると、

「こちらの日本酒付コースはお得なんですよ。
 このお酒、なかなか手に入らない代物ですしね」


「ひいらず」と読みます

と女将さんが言うではないか。

「ぅえっ!?」

動揺して変な声が出てしまった。

アンタどういうことですのん高いんちゃいますのんコレ!?

と夫を見ると、

「付け足してみました(テヘ)」

という答えが笑顔とともに帰ってきた。

旅行計画はいつも夫に任せて(丸投げして)いるので、文句を言える筋合いではない。
が、会計時にとても焦るので、できれば事前に知らせておいて欲しいと思う。

たいへん美味しゅうございました(岸朝子風)

それにしてもこの日本酒と前菜たちのハーモニーといったらなかった。
口内でこれほどの調和が起こるなど、そうそうあることではない。
塩で日本酒を飲む人がいるというが、塩分と日本酒は切っても切れない関係にあるというのは本当だ、としみじみ思う。
あまりのことにクイクイと日本酒を飲んでしまう。旅行一日目から、危険な兆候であった。

いいかげんにしてくんない?

途中でハルさんのジト目(どんだけ飲むねん)に気がつかなければ、初日で旅行を台無しにしてしまうところであった。
その後は我に返ってビールを飲み(←ほんとうに我に返ったのかという質問は現在受け付けておりません)、新鮮な海の幸を存分に堪能して、幸せな眠りに落ちる。

夜の間はずっと雨が降っていた。
さすがの夫も、寝ている間は気圧を上げる機能が止まるようである。

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この宿でも、その猫をかぶったような愛想のよさで女将さんに可愛がられたハルさんに祝福のクリックを。
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posted by 飼い主YとM at 02:13| 兵庫 ☁| Comment(8) | TrackBack(0) | 犬連れ旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月16日

たびいぬが往く−伊吹、奥様、九州男児−(Y)

門をくぐり、石畳の道をしばらく歩くと、

門を内側から撮る

そこには古い蔵を改装し、素敵なテラス席を設けた、レストランがあった。
グリーンで覆われた屋根は緩やかに日の光を遮り、心地よい風があたりを吹き抜けていた。

この手前にレストランの建物があります(建物を撮ってなかった・・・)

ここで、あまりお腹も空いていなかった私は「カレーライス」を注文する。
我ながら無難すぎるオーダーだと思うが、これからの旅の途中でカレーライスを食する機会がなさそうなので、大好きなものをとりあえず押さえておくことにした。

一方、妻Mはしばしの間、難しそうな顔でメニューとにらめっこしていた。
どうやら、私と同じく、大してお腹が空いてないようだった。
けれど、小腹を満たしてくれる軽食のようなものがメニューに見あたらない、そんな雰囲気を醸し出していた。

何を悩んでいるのやら

ほどなくして、妻Mは、意を決したようにメニューをパタンとテーブルに置き、オーダーをとりにきた店員さんに、こう言い放った。

「伊吹ハム」

ハム?ハムだけですか!?

ざわわ ざわわ と店員さんの心に呼応するかのように、周囲の葉っぱたちが揺れた。
ハルさんの大きな耳はピクッと動いていた。

「ハム食べるんやったら、ビールでも飲めば?」

ざわつく木の葉たちを鎮めようと、私は思わず口走っていた。
ハムだけ食べるなんて、あの時は非常識な気がしたのだけれど、今から思えば、周到な罠に誘い込まれていたような気がする。
いや、きっとそうに違いない。

「えー、そう?夫がそう言うなら飲もうかなー。メニューに地ビールって書いてあるし」

いつの間にか、妻Mの手には再びメニューが広げられていた。
どこからか、舌なめずりをする音が聞こえたような気がした。

けれど、不思議と、敗北感や失望感は湧いてこなかった。
車で出かけた際に、ついついお酒を飲んでしまう機会は私のほうが圧倒的に多いのだ。
そんなとき、妻Mはたいていの場合、運転を代わってくれる。
だからこそ、自発的にお酒が飲みたくなった折角の機会には、是非とも望みを叶えてあげてやりたいものだ。

手酌酒

ビール・・・・・・。

そんな殊勝な思いは、眼前に置かれた旨そうなビールの姿を目にした途端、どこかへ消えていったが、残り少ない理性がビールグラスを握ろうとする手を押し留めた。

3泊4日の犬連れ旅行のはずが、まだ初日の宿泊地にも到着しないうちにリタイア・・・
なんてことになったら、あまりにも情けない。
恥ずかしくて町を歩くことすらできない。

ううっ。ビール・・・(涙)

こうして、私は黙々とカレーライスを食べ、妻Mは悠然とビールを飲んでいた。
けれど、もはや只の「アテ」と化した伊吹ハムが思いのほか美味しかった(←1枚もらった)。
素朴な味わいだけれど、肉が本来持つ旨みを感じられる、そんな至極の一品だった。

そんな中、テーブルの下でお利口そうに(見せかけは重要だ)フセているハルさんの姿を見とめて、レストランを出入りする人たちは暖かい視線を送ってくれた。
犬の姿が珍しいからなのか、興味津々な人たちが多かった。

中には、近づいて撫でてくれる人もいた。
特に、二人連れの奥様―ずがそれはもう熱心にハルさんを可愛がってくれた。
名前を聞かれたので「ハルです」と答えると、

「ハルちゃーーん!」

と名前を連呼して撫で繰り回していただいた。

ハルさんも奥様―ずが大好きらしく、熱心に愛想を振りまいていた。
けれど、どうも奥様―ずのテンションが高すぎる、私はそんな違和感を覚えた。
最近、めっきりと人好きになったハルさんのテンションも、奥様の熱心な可愛がりっぷりにやや押され気味な様子であった。

どうしたのかしら?

しかし、その違和感の正体は結局分からないまま、奥様―ずはハルさんに手を振り振り去っていった。

程なくして食事を終えた私たち、ほろ酔いの妻Mと、撫でられまくってやや毛並みが乱れたハルさんと、素面の私(Y)も、共に店を出た。

すると、そこに団体旅行の一団とおぼしきおっちゃん達が近づいてきた。

「こんなところに犬がおるとー」
「おうおう、ほんとやー」

今ではあまり聞かれなくなったヒロシの言葉遣いとそっくりのおっちゃん達だった。
恐らく、九州から遠路遥々来たのだろう。

ハルさんは四方八方から伸ばされるおっちゃん達の手にひるむことなく飛び込み、愛想を振りまいていた。

ヒロシーずね!

「かわいいとー」
「ほんにー」

本当にこんな言葉遣いだったのか全く自信はないけれど、おっちゃん達もみんなハルさんを可愛がって撫でてくれた。
それにしても・・・・・・、見た目には九州男児ですたい!的でシャイそうな感じなのに、ハルさんに対する撫で回し方に迷いがない。

さあさあ撫でて撫でて

ふと、顔を見上げると、おっちゃん達の顔はみんな赤らんでいた。
隣には、赤らんだ顔をした妻Mがハルさんのリードを持っていた。

どうやら、この場で素面なのはハルさんと私だけのようであった。

おっちゃん達もどこかで昼間から引っ掛けてきたのだろう。
九州男児だからか。
いや、それではハルさんのリードを握っている某Mさんだって九州男児ということになる。
結婚してもう長いこと経つのに、今更そんなサプライズは欲しくない。

そうすると、レトロモダンを装う町並みが人々を惑わすということだろうか。
もしかしたら、長浜という町には人を(字面どおりの意味で)酔わせる魅力があるのかもしれない。

ご満悦

ふと辺りを見回すと、酒屋さんが目に入った。
一人だけ(この際ハルさんはカウントせず)素面なのも悔しいので、おっちゃん達と別れてから、地酒のワンカップを購入する。

不健康なモノを健康そうに撮る

そして、これを契機に、今回の旅行では行く先々で地酒のワンカップを購入することに決めた。
何らかのテーマがあると、旅に彩りが加えられる、そんな気がする・・・・・・。

そう思い、町を出ようとしたところ、街角にあるカフェから大きな声が飛んできた。

「ハルちゃーーーん!!」

声の主は、もちろん、先ほどの奥様―ずだった。
そして、再び奥様―ずの声を聞いた途端、心の奥にわだかまっていた違和感が、すうっと消えてなくなるのを感じた。

そう、奥様―ずのテンションは九州男子―ずのハイテンションと全く同じ種類のものだったのだ。

恐るべし長浜。

そこは、人を酔わせる町。

酒気帯犬?

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たびいぬ長浜編はこれにて終了です。
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2007年09月14日

たびいぬが往く−黒壁、鳥居、7つの傷−(Y)

名神高速から北陸道へと道をとり、しばらく走ると、豊臣秀吉がつくったといわれる町、長浜に到着する。

町の中心には黒壁スクエアと呼ばれる一帯が広がり、レトロモダンな雰囲気を漂わせている・・・。
さらには犬連れでもテラスで食事を摂れる店だってある・・・。
そんな情報に引き寄せられて、私たちはハルさんを連れて長浜の地へ降り立った。

ボボ尻が往く

確かに、町並みは統一された黒壁で統一されている・・・・・・ように見えるが、実は所々に黒壁でない店があったり、街路の上空には電線が行きかっていたりと、例えば倉敷の美観地区と比べると、隙だらけの感が否めない。

右奥の店からは好きにやっている感が漂う

けれど、無理に背伸びをしていないおかげで、庶民的な匂いがプンプンと漂う町の雰囲気は決して悪くない、と思う。
壁に大きな立ちション禁止マークの鳥居が貼りつけられていたって、

確かにそういうポイントなのかもしれない

商店街にケンシロウの巨大な人形が仁王立ちしていたって、別にいいんじゃないかとも思う。

ケンシロウの奥に立っているのはなんだろう?

ハルさんは何故かケンシロウに興味津々だった。
寡黙でなマッチョな漢が好きなのかもしれない。
好きな男性のタイプは?と聞かれると「角田信明」と答える可能性だって否定できない。
(歌、上手くてびっくり)

ケンシロウも案外歌えるのかもしれない

まあ、それはともかく。
この日は平日にも関わらず、町を散策する人の数は決して少なくなかった。
町営の駐車場には観光バスだって停まっていた。
けれども、犬を連れて歩いている人とすれ違ったのはたった一回きりだった。

その際だって、
「ギャー!コーギーよ!悪名高きコーギーよ!!」
と、大回りに避けられたような気がする。
もちろん、気のせいなのかもしれない。
ただ、もう慣れてしまったので、特になんとも思わなくなった。
(旅に出るとコギ族の武勇伝をよく聞かされるのです)

しかし、町をぐるりと一周してみて、犬連れが少ない理由がなんとなく分かったような気がする。
当たり前のことだけれど、長浜は普通の観光地であって、特に犬が入れる店が多いわけではないのだ。
カバンに入るような小型犬なら話は別かもしれないが、ハルさんのように地面を這いつくばることしかできない犬(←我ながらひどい言い方だ)が入ることのできるショップは皆無だった。

待ち尽くす

そこで、私たちはハルさんを外で待たせ、交代で店をひやかすことにしたのだけれど、夫婦で一緒に店を巡らないことには、何となく買い物気分だって盛り上がらない。

やっぱり這いつくばる

結局、ひとつもモノを買うことなく、食事を摂ることにした。

向かった先は「カフェレストラン洋屋」。

この中に店があるようには見えないけれど

古びた門をくぐって中に入ると、そこには・・・・・・。

つづく


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嗚呼。
長浜の話は一回で終えようとしたんですが、ここで力尽きました・・・。
結局、ひたすら飼い主の買い物に付き合っただけのハルさんにお疲れ様のクリックを。
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2007年09月12日

たびいぬが往く−序章−(Y)

実は毎年、ハルさんを連れて旅に出ようと思っているわけではなかったりする。

犬連れ旅は楽しいけれど、やっぱり様々な制約はあるし、犬が入れない場所がたくさん存在する。
ハルさんを実家にでも預けておけば、夫婦で長期間の旅行をしたって大丈夫だ。

そんなわけで、昨年に引き続き、今年も「死ぬまでに縄文杉が見たい」という妻Mの希望を叶えようとしていたのだが・・・・・・。

リン君一家とともに、ハルさんを連れて渓流沿いのをほんの少々(直線距離だと1キロくらい)歩いただけで、翌日には「足が筋肉痛です」と言い出す妻M。

まったくだらしがないんだから

さらには、日本一長い商店街、天神橋筋商店街を半分くらい歩いただけで「のどが渇きました」とヘバる妻M。(←子供の言い訳だ)

実はオサレな店がたくさん隠れている

そんな妻Mの醜態に今年も屋久島行きは延期となった。

ヘビースモーカーなうえにメタボという、不健康極まりない会社の同僚が縄文杉を見てきたという話を聞き、
「あの人がイケるのなら、アタシだって!」
と息巻いていた妻Mだったが、最近その話がガセ(実は途中でリタイアした)だったと聞いたらしく、昨年とは違って神妙な面持ちで延期の決定を受け入れていた。
(一体いつになったら行けるのだろう……)

そんなわけで、今年もハルさんと一緒に旅行に出ることになった。

やりました

よく考えたら、ハルさんと泊まりの旅に出るのはもう5回目になる。
2歳半となったハルさんは、いつの間にか、飼い主が「どこへ連れて行っても大丈夫」と思えるほど立派なたびいぬに成長していた。

飼い主が性懲りもなく旅先で暴飲暴食を繰り返す傍ら、ハルさんは「ワタシ、この飲んだくれとは関係ありませんから」と優等生ぶりをアピールできるほどの心の余裕を持っているようにも見える。
しかもハルさん、妻Mとは正反対に(←しつこい)余裕綽々で屋久島を走破できるだけの体力だって有している。(もちろん犬は駄目だと思うが)

昨年は清里、軽井沢という犬連れ旅行のメッカとでもいう場所を巡った私たち。
とても楽しい思い出ばかりのこれらの土地に再び赴くことも考えたけれど、やっぱり飽き性な飼い主とハルさん(ハルさんだって飽き性だと思う)は、また違った土地を旅することにした。

どこかのテラスで

さて、そんなたびいぬハルさんが、最初に降り立った町、そこは……。

つづく

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すいません、また序章で終わってしまいました。
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posted by 飼い主YとM at 23:31| 兵庫 ☀| Comment(15) | TrackBack(0) | 犬連れ旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月11日

たびいぬ帰る(Y)

ご無沙汰しています。
いつものことながら、コメント返しが大変遅れていて申し訳ありません。
実は昨日、恒例(?)のハル連れ旅行から帰ってきました。

怪しげな天候

これからは、しばらく旅行記が続くと思いますが、お付き合いいただけると幸いです。

斜面で3ショット

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恒例(?)の「ハルさん試練の巻」は果たしてあったのか。
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帰ってから写真を見てみると、撮影枚数が1200枚を超えていました・・・・・・。
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posted by 飼い主YとM at 23:45| 兵庫 ☁| Comment(10) | TrackBack(0) | 犬連れ旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月06日

現われ出るもの(Y)

蜂に刺されたことにすら気がつかない感が拭えない、我が家の鈍感犬ハルさん。
けれど、一応の分別というか、犬らしい警戒心は持ち合わせているらしく、初めて目にする物に対しては、とても慎重なリアクションを見せる。

なんだカニ

そういえば、ドッグランで水の注がれた池に初挑戦した時も、結局、池の周囲をウロウロするばかりで、入水することはなかった。

柴ーずに追い詰められて必死の表情

浅瀬ではしゃぎまわるようになった今となっては信じられない光景だけれど、ハルさん、猪突猛進なコギでないことは確かのようだ。

浅瀬ではまるで猪のよう

そんなハルさんの前に、先日購入した新しいTシャツが入っていた透明な袋を置いてみた。
そして、ハルさんの眼前でオヤツを見せびらかしながら、袋の中に入れてみる。

オヤツ・・・・・・

オヤツは食べたい、けれど、見慣れないビニール袋の中に顔を突っ込むのは怖い。
そんなハルさんの心中で激しくうごめく葛藤が、やがて具現化する。

ヨダレだ。

じっと、袋の奥を見つめるハルさんの口はまるでイグアスの滝のようであった。

しかし、事ここに至り、飼い主は己の考えの浅はかさに気がついた。
マーライオンのようにヨダレを垂れ流されるのは真に心外だが、元はといえば、ビニール袋に飼い主がオヤツを入れたのが、ヨダレ発生の原因である。
このまま、オヤツをなかったことにするという手段(非常に大胆不敵な案だ)も取ることは可能だが、それではハルさんがあまりにも不憫である。

そこで、ビニール袋をパックリと広げ、ハルさんの顔が入りやすいようにしてあげた。(←不条理)

入り口を指差す

ところが。

飼い主が袋を持ったことで安心(?)したのか、なんと、ハルさんがするりと袋の中に顔を入れてきたのだ。

ココに顔を入れたらいいのね!

ハルさんは、そのまま、オヤツを食らいだした。
すっぽりと首筋まで覆われたビニール袋を気にするそぶりなど見せず、一心不乱にボリボリとオヤツを食べていた。

そして、オヤツを食べ終わったとき、ようやく、自分の頭部がビニール袋に覆われていることに気がついたようだった。

ボーゼンと虚空を見つめる

ビニール袋はまるであつらえたように、ハルさんの首にぴったりと貼り付いていた。
その姿は、まるで新型の潜水服を試着しているようにも見えた。

「ワハハハ!これでもう溺れても大丈夫やな!!」

(悪徳)飼い主にこのような声をかけられても、ハルさんは少しも嬉しそうではなかった。(当たり前だ)
そのうちに、やはり息苦しいのか、ビニール袋を取ろうと必死にもがき始めた。

ハルさんは懸命に首を振った。
その前足は、ビニール袋の余分な部分を捉えようと、目一杯に伸ばされた。

目標地点は明白だ。
ビニール袋の鼻先に広がる部分を前足で押さえつけ、袋を固定し、頭を後方にずらせば、脱出は容易なはずである。
ハルさんもそのことは分かっていたに違いない。
けれど、悲しいかな、ハルさんの前足は、鼻先より前方の物を押さえつけるほど長くないのだ(号泣)。
その極短の前足はつるり、つるり、とビニール袋の表面をただ空しく滑るのみであった。

自らの力ではどうしようもないと悟ったハルさんは、張本人である飼い主に

「お願いですから取ってください」

と泣きついてきた。

なんかヤバイです。本当にお願いします。

潜水服を着ているハルさんの姿は面白いが、このままではハルさんが窒息してしまう恐れが否めない。
さすがの極悪飼い主も不憫に思い、袋をスポッと取ってあげた。

足さえ長ければ・・・・・・

ハルさんもホッとしたようは表情を見せる。
けれど、ハルさんの醜態はあまりに面白すぎた。
そこで、悪徳飼い主は、駄目元でもう一度袋にオヤツを入れ、パックリと開いた袋の口をハルさんに差し出してみた。

すると、やはり。

惨劇は再び繰り返された。

再び装着

ハルさんは、相当好ましくない状況下であるとはいえ、オヤツを食べることができるという事実に心を奪われているように見えた。
飼い主に幾ら笑われようが、その瞳はまっすぐにオヤツを捉えて離さなかった。
ある意味、ハルさんの「食」にかける情熱は尊敬に値するのかもしれない。

ウマウマ

そして、数度に渡ってハルさんの顔面が通り過ぎたビニール袋には、ハルさんから溢れ出したパッションの欠片がキラキラと輝いていた。

ヨダレだ。

ヨダレは無限大なの!

もういいよ、ヨダレは・・・・・・。

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そして、際限なくあふれ出すヨダレの洪水には「渇!」のクリックを。
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本当に掃除が大変なんです(涙)。
posted by 飼い主YとM at 21:48| 兵庫 ☁| Comment(10) | TrackBack(0) | 日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月03日

川辺の出来事−襲撃−(M)

※川遊びの記事は、前々回(再放送)、前回(邦正)からの続きです。

浅いと走る!走る!

そんなこんなで楽しく(?)遊んでいたハルさんたち。
お昼も食べて(人が)、もう少し先へ進もうかと歩き出した途端、事件は起きた。

川沿いの道を進む

「イタッ」という声が聞こえた。
先を歩いていたリンくんの飼い主さん、トモさんの声のようだ。
見るとトモさんのいるあたりの地面から何匹もハチが沸き出ている。
なんということか、ハチに刺されたのだ。

さらに悪いことに、ハルさんがまさにその場所を通過しようとしていた。
大好きなトモさんに追いすがり、ロングリードいっぱいまで出張っていたのだ。

引き戻そうとするが、慌てているせいかロングリードがうまく撒き戻らない。
それでも必死の呼び戻しに応じて戻ってきてくれる。
しかし

「えー、今呼んだー?」

ウケるんですけどー

と、緊張感のまるでない笑顔で、テチテチ歩いている。

ゥラー!ハル!キリキリ歩かんかー!ていうか走れー!!

と叫びたかったが、ハチを刺激するのが怖くて言えなかった。
そんなハルさんの尻あたりに、ハチがたかっているのが見えた。
今思い出しても恐ろしい光景である。

このとき私は

赤い服がダメなんだ、ハチがイラッとするんだ、
嗚呼どうしてもっと自然に近い色を着せて来なんだ、
でも自然に近い色って何、緑か青かやっぱりラ(裸)か?


と現実逃避していた(←ダメなやつ)。

ちなみにハチの攻撃色は黒だ。赤は牛である。
このケツ毛にイラッとするのかもしれない

しかしハルさんにハチがたかっていたのは事実である。
戻ってきた後、まんべんなく体をチェックする。
しかし、とくにおかしなところは見つけられなかった。
本犬も至って元気そうだ。

ワタシはいつだって元気いっぱいですよ

「まあ大丈夫ちゃう?ハル、こう見えても犬やし」
「野山で暮らしてたら、ハチに刺されたくらいでどうかなるわけにもいかんやろし」

しかし残念ながら人間は野山で暮らす生き物ではないので、とりあえずリン君の飼い主さんたちは近くの病院へ、私たちは一足先に家に戻ることになった。
(実はリン君の飼い主さんはお二人とも刺されていた)
しかしここで問題が発生した。
リンくんを連れて病院へは行けない。まだ暑い日中、車のなかに置いておくわけにもいかない。
そんなわけで、私たちが連れ帰ることになった。

それほど面識があるとは言い難い怪しげな人間2人と、さほど面識のない奇怪な犬1匹と一緒に、まったく面識のない謎の部屋に連れ込まれたリンくんは、最初こそ部屋に充満するハル臭にピリピリした様子を見せていたが、やがて

「ええか、ちょっとくらいケツ毛伸びても」

と腹をくくったらしく、怪しげな人間たちとも遊んでくれるようになった。

「撫でてください」
とでも言わんばかりに、ゴロンとお腹を出して寄り添ってくる。かわいい。

楽しくて仕方がない(主に人が)

念のため、当初は隔離されていたハルさん(←もちろんジリジリしていた)を解放しても、

早く出せと目で訴える

特に何事も起きることなく、2匹ともそのうちウトウトし始めた。
やはり犬たちも疲れていたようである。

それにしてもリンくん、怒りもせず拗ねもせず、びっくりするほど適応力があってものわかりのいいワンコである。飼い主さんたちの日々の躾が行き届いているのであろう。

やりたい放題(主に人が)

その後、飼い主さんたちが戻ってきて、リンくんはとても元気になった。
私たちといるときも、シオシオしていたわけではないが、やはり飼い主さんが一緒だとなんというかこう「ケツ毛なんか伸ばすかよ」的なオーラが漲っている。
やはりさびしかったし不安だったのだろう。
飼い主さんたちの傷も、ひとまず大丈夫ということで、本当によかった。

しかしこの川辺の試練(←というかもはや事故)はまだ終わりではなかった。

川から帰って数時間後、突然ハルさんが足を引き摺りだしたのだ。
ついさっきまで普通にウロウロ歩き回っていたのに、である。
しばらく様子を見てみるが、一向に普通に歩く気配がない。
見た感じとくにおかしなところはないが、もし骨や関節を負傷していたらと思うと下手に触れない。
今日は川で大暴れしてきたのだ。思い当たる節ならいくらでもあった。

大暴れ中

慌てて病院に連れて行く。待合室でじっと待つ。
さすがにこのときは2人ともかなりピリピリしていた(と思う)。
じっとしていると悪い想像ばかりが頭を回り、それでも口に出すのは恐ろしく、また言っても仕方がないので、結局は黙って座っているしかない。
たいしたことないだろうと思ってみるけれども、たいしたこともないのに足を引き摺る理由が思いつかない。
同じように待合室にいた、病院嫌いの柴犬の気持ちを、これほど身近に感じたことはなかった。できることなら私も一緒に耳と尻尾を極限まで下げ、歯茎を剥き出して低くうなり続けたい心持であった。

こんなとき、飼い主はなんと無力なのだろう。
病院へ駆け込む以外、何もできないのだ。

ひどく長く感じた待ち時間を経て(←実際にはいつもと変わらなかっただろうが)、ようやく診察室に入る。
いっそ気のせいであって欲しかったが、ハルさんはやはりここでも足を引き摺っていた。

「結構、引き摺ってますねー」

言いながら、先生は足を伸ばしたり曲げたり回したり色々と診てくれる。

「とくに何をしても痛がる様子もないので、骨や関節には問題ないと思います。
 あとは、何か刺さったりしたとか」
「ハチに追いかけられたんです。そのとき刺されたかもしれません」
「そうですかー……あ、あれ?」

先生が後ろ足の真ん中あたりをじっと見ている。

「あー!左足首が腫れてますね。
 ちょっと赤黒くなってるし、何か刺さった感じですよホラ」
 
そういってハルさんの後ろ足を見せてくれたのだが。
 
「……先生」
「はい?」
「足首って……ドコですか?」
「え?あーすみません、ココですよココ」

笑いながら先生が指し示してくれた場所は、足の真ん中ぐらいにある、後ろへ曲がっている箇所だった。
ちなみに私はココを勝手に膝だと思い込んでいた。恥ずかしい。

「ワンちゃんはね、常につま先立ちなんです。
 お座りすると初めて足が全体に地面に着いたことになるんですよ」

ということは私がもも肉だと思っていた場所は実はふくらはぎですか先生。
ソコが足首だとすると、ハルさんにはもう曲がる場所がありません先生。
ただでさえ短いのに。膝とかちゃんとありますか先生。
気休めでもいいからあるって言ってください先生――


膝を探せ

骨と関節に問題がないと知り、途端に余計なこと(←ほんとうに余計だ)に気が回り始める。

とにかく言われた箇所を触ってみる。
確かに少し膨らんでいて、地肌も赤黒く変色していた。
ハチとも断言できないが、ちょうど関節に何かが刺さって腫れたため、一時的に歩き方がおかしくなったらしい。
聞いてみると、やはりワンコは昆虫系の毒には強いようだ。
刺されても何事も起こらず、まったく平気な場合も多いという。
さらにはマムシの毒にも結構強いらしい。
こういう話を聞くと、やはりハルさんも、そう遠くない祖先は野原に暮らしていたんだなと実感する。
まあ今回は刺されどころが悪かったのだろう。
それでも多少は腫れているようなので、薬をもらって帰る。

そんなわけで、この日は実にいろいろなことがあったが、とにかくあまりひどいことにならなくて本当によかった。
しかし、この日のメインイベントであった「なかみーさん一家を夕食にご招待」が完全に流れてしまったのが残念だ。

M作オードブル

せっかく、色々と張り切って用意していたので(←用意が整ったあたりでハルさんの異変に気づいた)、写真だけでも撮ってみる。

Y作お好み焼き

やはり、自然の野山には危険がつきものだと再認識した、夏の終わりの一日であった。

リンくんの手が好きです

なかみーさん、トモさん、リンくん、ありがとうございました!
今度はぜひリベンジ(?)にいらしてくださいね。

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いつもどうしてこんなに話が長くなってしまうのでしょう、私たち。
それもこれもハルさんが色々とやらかしてくれるから?
ネタ切れの飼い主を助けてくれるスーパードッグ(←鈍くさいともいう)、ハルさんにお疲れ様のクリックをお願いします。
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翌日には無事、足は元通りになりました。
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