世の中には黒い犬が星の数ほどいるだろうけれど、我が家で「ザ・ブラック」といえば彼女のことだ。

黒い柴刈機(←名言)。
讃岐の黒い核弾頭。
讃岐のブラック・ホーク。
讃岐の黒うどん。
彼女が数多の戦いで獲得してきた歴戦の勲章は、まるでハリウッド映画に出てくる米軍のお偉方の左胸のように光り輝き、見る者の目を眩ませる。
だが、讃岐の超絶ブログ「
うどんの国を背負って立て〜四国犬ゆめきちのぐうたら記〜」の作者、フジウラさんから「タイマン張りませんか?」との知らせを受け取ったとき、私たちは二つ返事で引き受けた。
なぜなら勝算が二つもあったからだ。
ひとつはゆめちゃんが築き上げてきた「
洋犬には割りと心が広いような感じ伝説」。
もうひとつは、ハルさんの「
大きな犬には早々と屈服することが多いような伝説」(←慌ててそれっぽく作ってみた)。
近所のラブラドールに会うと、
「私はミミズです!あなたのミミズになります!!」と体を地面にめり込ませんばかりに平べったくなるハルさんである。
大きな犬にはからきし弱い(はずだ)。
そして今日の相手は歴戦の勇者、生きる伝説、「ザ・ブラック」。
もう結末は予想できたも同然だ。
そう思い、事前に書いておいた記事がコチラである。
(以下、空想)
2007年7月某日。
いよいよ、ハルさんが讃岐の黒獅子と対面した。
1m程の距離を置いて静かに見つめあう二匹の犬。
高級なゼリーのように濃密な時間は、ゆめちゃんが右足をそっと前に出したことにより、破られた。
ハルさんがコロンと転がったのである。
一体、二匹の間に何があったのか、我々には全く分からなかった。
ひょっとしたら亀仙人にしか見えないスピードで両者の拳が行き交ったのかもしれない。
けれど、答えは風に吹かれている。
友よ、答えは風の中だ。
ストロング夢 ○−× 獣身サンダーハル
試合時間:25秒
決まり技:ドラゴンボール的な何か
いずれにせよ、上下関係のはっきりした2匹の犬は、これ以降、まったりと穏やかに過ごすことになり、4人と2匹は幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。(以下、現実)
いよいよ、ハルさんが讃岐の黒獅子と対面した。
いきなり、テンションMAXでピョンピョンと跳ね回り、ゆめちゃんに近づくハルさん。
そしてゆめちゃんの向こう側にいるフジウラさん父子にもピョンピョコ近づこうとする。
ほんの少し、お互いに鼻先を付け合せ、クンクンしたのだったが、直後、跳ね馬ハルさんのボディがゆめちゃんの鼻先を直撃した。
一瞬の後。

この犬をどうすべきか、クルクルとゆめちゃんの脳内で回転していたスロットがピタリと止まった。
そこには、「KILL」の文字が三つ、横一直線に並んでいたに違いない・・・・・・。
エネミー認定を下したゆめちゃんの動きは迅速だった。
早速、こっそり隠し持った「YUME NOTE」にハルの名前を書き込む。
その上には「あずき」「あきと」という文字が書かれていたのを、オスマン・サンコンに匹敵する私の眼力が見逃さなかったことも付け加えておこうと思う。
(なお、「YUME NOTE」に名前を書かれた犬の末路について知りたい方はうどんブログを是非どうぞご賞味あれ。物凄く面白いサイトなので知っている方が殆どでしょうが、まさか自分の犬が同じ目に会う日が来るとは思わず、無邪気に笑っていた日が遠い昔のことのように思える。)
何とか、「YUME NOTE」から名前を消してもらおうと、飼い主たちは必死だった。
今更ながら、犬同士の挨拶をさせてみようと、ハルのケツ臭をかがせてみたが、
「アタスの頭上に乗っていたのはコイツの毛か!!フギャーッ!!!」とゆめちゃんの怒りを倍増させただけであった。
ど、どうしたらいい?と背後を振り返ると、まだ会って1分も経たないうちに、フジウラさんがハルにインリンを命じていた。(よっぽどやりたかったのか?)

だが、これはチャンスだ。
ハルさんがこのまま屈服したフリをしていれば、ゆめ様の怒りが治まるかもしれない。
周囲にいた誰もがそう思ったに違いない。
一縷の望みを託して、ゆめちゃんがハルさんに接近した。

だが。
2、3回匂いを嗅いだ後、
「三文芝居は見とうないんじゃボケーッ!!」と、死神の大鎌は振り下ろされた。
・・・・・・。
「洋犬には割りと心が広いような伝説」って何だっけ何だっけ♪
伝説崩壊。フジウラさんとゆめちゃんが
二人羽織 二人三脚で築き上げてきた栄えある伝説、血と汗と涙の結晶は、こうして脆くも崩れ去った(涙)。
この後、現場には、
キューバ危機以上の緊張感が漂っていた(ように思えた)。
もう、駄目だ。
とこの場の全員が悟ったに違いない。
これより先、この二匹が仲良くなることは、ビートルズが再結成するより難しいことだと。
こうして、ゆめちゃんとハルさんは、人間の壁を挟んで幽閉されることになり、世界は束の間の平穏を取り戻していった。

だが。
ここから伝説の悪女、ハルさんの独演会が始まる。
フジウラさんは、ハルさんをターゲットオンし続けるゆめちゃんの気を何とか逸らそうと、
「これ、雑種」

とか、「ほれ、ムササビ」

と、キュート系の技(技なのか?)を繰り出していたが、ジャパニーズドッグのアツいソウルがこれしきのことで折れるわけはなかった。
オヤツをもらう時以外、焦がすような黒き瞳は常にターゲットを捕捉していたのである。
いつかどこかで見た風景とそっくりであった、

一方のハルさん。
黒い視線を浴びながらもエビちゃんスマイルは全く崩れることがなかった。

この笑顔にフジウラ父子、まんまと
騙される やられる。
ふと気が付くとフジウラさんはインリンやら女豹やら
口に出すのも恥ずかしい コマンドを何度も発令していた。

そして、ゆめ父さんはいつの間にかハルさんを膝に抱き上げ、縁側の猫を愛でるように撫でていた。

この様子を見て、ゆめちゃんは当然
「ウチの人たちをたぶらかしおって!!グルキジョェギャオォウ!!」と怒髪天を衝いていた。
私たちは「ゆめ様!どうかお納めください!!」と必死に撫でていたが、誇り高き日本犬としては初対面の人間から撫で回されてもただウザいだけだったのかもしれない。

さらに飼い主を驚愕させたのは、しばらくハルと戯れた後のフジウラさんの一言だった。
「ハルさん、凄い!ヨシって言わんとオヤツ食べんのね!!『ヨシ野川』とか『ヨシ村作治』って言っても全然食べんもん。さすがやわー」
・・・・・・そんなトラップ仕掛けたこと、今まで一度もないんですが、フジウラさん。
なのに、何でこのボボ犬は完璧にやり遂げることが出来るのか。
どこまでこのケツ毛は本番に強いのか。
さらに、インリンで黒い稲妻の一撃を受けたとき、ハルさんはびっこを引くそぶりをしていた(飼い主もさすがに焦った)が、どこにも外傷はなく、しばらくすると普通に歩いていたし、走ってもいた。
まるで
南米のサッカー選手のようなずる賢さである。
少しでも相手に攻撃を受けるとと大げさにやられたフリをし、常に笑顔を崩さず、アドリブにも対応する。
これが、何匹もの共演者を蹴落とし、トップスターへと駆け上がる秘訣なのか。
(スターって何だ?にしきの?)
この後、一行は怪しげなドッグランへと移動したのだが、ここでも、ハルさんのトリックスターぶりが炸裂した。
ノーリードとなったハルさんは、リードに繋がれたままのゆめちゃんの周りをチョロチョロと走り回り、さらにゆめちゃんを苛立たせることに成功したのである。

おかげでゆめちゃんは折りからの暑さとハルさんに対する苛立ちでオーバーヒートし、地面に伏せたまま動かなくなってしまった。

カフェでは係留され、

ドッグランでも拘束される。

さらにはうりぼうみたいな犬が周囲を我が物顔で走っている。

ゆめちゃんにとっては苦痛と屈辱に見舞われた時間ではなかったかと思う。
どうしようもできなかった気がするけれど、ゆめちゃんには気の毒なことをしてしまったように思う。
伝説は壊されるし、ゆめちゃんにとって楽しいことなんて何一つなかったような気もする。

ゆめちゃんは「ああ、犬ってこんな感じやんね」と私たちに犬本来の性質を思い起こさせてくれる、佇まいの立派なジャパニーズ・ドッグであった。
誇り高い犬が好きな人は、きっとゆめちゃんのような犬が大好きだと思う。
なんといっても猪を狩る犬なのだ。生半可な覚悟ではやれない仕事をしてきた血筋なのである。
少し前、
犬を相手に勝てる勝てないの話をMが書いていたが、ゆめちゃんには命を懸けて戦う必要を感じてしまった(なんの必要か!?)。
四国犬がこれほど大きくて、これほど静かな迫力を有しているとは予想外だった。
正直、できれば相手にしたくないなと思った。(だから、何で相手をしなければいけない!?)
ところが、ウチのボボはどうやら違う認識を抱いていたようだ。
ボボ毛の分際で、ゆめちゃんがオションした跡に、しっかりとマーキングしていた。
ゆめちゃんの黒いレーダーに捕捉され続けても、目を逸らさなかった。
笑顔で黒い光線を受け止めていた。
同じようにエネミー認定された
あずきちゃんや
あきと君はゆめちゃんの周囲から出来る限り遠ざかろうとしていたようだが、ケツ毛はゆめちゃんがギリギリで届かない場所を楽しそうに走りぬけていた。
真正面から喧嘩をして勝てるはずもないことは、さすがに分かっていると思うが、ギャルゴル言うたびに、飼い主さんから叱られ、ずっと係留され続けているゆめちゃんの姿を見て、身の安全を悟ったのだろうか。
だとすれば、このシャコタン、色んな意味でヤレる犬なのかもしれない。

そして最後になりますが、ゆめちゃん一家の皆様、お会いできて本当に嬉しかったです。
超絶ブログを描くフジウラさんは実際にお会いしても、本当に楽しい方でした。
ゆめ父さんは優しさがにじみ出ているような素敵な方でした。
お会いしたら「お父さんと呼んでいいですか!お父さん!!」(←もう呼んどる!)と言いながら握手をしようと思っていたのに、出会った瞬間から色んなことが起こりすぎて実行に移せなかったことが残念でなりません。
なお、ゆめちゃんのブログで描かれた決戦の模様は
コチラ。
最後のほうに大きな誤りが書かれていますので、騙されないように注意してください。
玉葱島の戦い、本編はこれにて終了です。
後はハルさんが語るエピローグを残すのみとなりましたが、それはまた次回に。
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だらだらと長い記事を読んでいただきありがとうございました。
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