そのとき私は、ブランデーグラスを片手にハルさんのボボ尻を優雅に撫でまわしていたところであった。
羽織っていたのはもちろん紅いベルベットのガウンである。
最近、とみに仕事が多忙なMの帰りは遅い。
ああ、ようやく帰れるようになったんだなと思いながら、私はハルさんのボボ尻から手を離し、携帯電話を手に取った。
「なあなあ!ごま豆腐とまめ豆腐とオクラ豆腐、どれがいい?」
「は?とうふ?・・・・・・えっ?」
「うーん、どうしよっかな。まあええわ。私が選んどく。ほな今から帰るから!」
「ん?あ、そうなん。で、豆腐って何?」
ブチッ (←電話の切れる音)
さっぱり意味が分からなかった。
こんな時間に豆腐屋さんが開いているわけはないし、スーパーだって開いているかどうか疑わしい時間帯である。
ゴハンは用意している。
急に豆腐が食べたくなった理由は何なのか、なぜその三択なのか、高野豆腐ではダメなのか、等々、謎は膨らむばかりである。
けれど、考えてもどうしようもないことなので、再びハル毛をしごいて時を過ごすことにした。
そして数十分後。
「結局、ごま豆腐にしたわー」
と言いながらMが持ち帰ってきたものは、

ごま豆腐をモチーフにしたクッションであった。
他にも色んな豆腐をモチーフにしたクッションがあったらしい。
そして、このクッションを購入した動機は、
「ハルちゃんのアゴ置きにしようかと思って」
ということのようであった。

「 いや、でもハルちゃん、ご覧の通りたいそう足が短いし、
アゴを乗せるモノなんて必要ない気がするんですけど」
という言葉は、連日の残業で疲労感を漂わせるMには言えず、そっと胸のうちにしまわれた。
そして。
「さ、ハルちゃん。アゴ置きやでー」
という飼い主の期待感に満ちた声と共に投入されたごま豆腐は。

おもちゃと勘違いされたハルさんに捕らえられ、振り回され、叩きつけられた。
予想外の光景に呆然と立ち尽くすM。

「ハ、ハルちゃん、それアゴを乗せるんよ!
もっとこうまったりした感じで……うう……」
ようやく我に返ったMが止めに入ったとき、ごま豆腐に飾りとしてつけられていた黒ゴマ風のミニクッションはとれかけていた。ひと暴れしたハルさんは非常に満足げであった。

「 ああ・・・ごま豆腐ちゃんが大変なことに。
このクッションな、すんごい手触りがええねん。
だからアゴ置きにええと思ったんやけどなあ。
ハルちゃんにとってはただのおもちゃか・・・。
あ、でも夫、ちょっと触ってみ?びっくりするくらい手触りがええんやから。
騙されたと思って、さ!」
と、Mがあまりにも主張するものだから、「ふーん、どれどれ」と、ひと撫でしてみた。
・・・・・・そこにはハルさんの唾液の触感しかなかった。
ミクロの力&酵素パワーで繊維の中までしっかり唾液が浸透していますね
そんな感想以外は抱きようがなかったので、そのことをMに伝えると、
「ウソ!?ごま豆腐ちゃんがそんな・・・・・・」
と言いながらごま豆腐を抱き上げたのだが。
あまりのぐっしょり感に愛しの「ごま豆腐ちゃん」を持ち続けることができなかったのだろう。
1秒とたたずに放り投げてしまった。
転々と転がるごま豆腐は再びハルさんの顎に捕らえられ、唾液が注入されていく。

おわった・・・・・・。
その場にいた誰しもが(ハルさんでさえ)、そう思っただろう。
Mを除いては。
・・・・・・数分後。
「見て見て!ハルちゃんがアゴ乗せてる!」
と、Mが放った不自然なくらいの大声が部屋中に響きわたった。

なるほど、確かに、ごま豆腐にアゴを置いているハルさんの姿がそこにはあった。
だが。
「・・・どうせ、無理矢理アゴ乗せたんやろ。なんか笑顔がぎこちない」
「そ、そんなことない!ハルちゃんが自ら!ごくごく自然な流れに乗ったような感じで、この形に!」
「不自然な日本語やな。これぞまさにパワハラや。
ハル、もうええで。もうヨシ!」
と恐らく「マテ」のコマンド発されていたハルさんはホッとしたような表情で、ごま豆腐から顔をあげ、立ち上がった。
自らが分泌した物とはいえ、あれだけぐっしょり濡れているクッションの上にアゴをのせ続けるのは、やはり嫌だったに違いない。
「あっ!ハルちゃん!?『マテ』を言うたのは私やから、私が『ヨシ』って言った後に動かないと!」
「やっぱりな」
「ウッ……」
「語るに落ちたな」
「で、でもオモチャとしては機能してたやろ?」
「せやなー。近年稀に見るはしゃぎっぷりやったし、気に入ったのは確かかもしれん」
「そ、そうですよね(←なぜか敬語)、ハ、ハハハ……」
こうして、アゴ置きクッションハラスメント大作戦は大団円を迎えた・・・・・・ように思えたのだが。
ケツ毛の長さと飽きっぽさだけは超一流セレブのハルさん、翌日には既にごま豆腐に飽きてしまったらしく、無残に放置されるごま豆腐の姿が侘しげにたたずんでいるのであった。

****************************************
例え一時でも、ほんの一瞬でもハルさんの寵愛を得た「ごま豆腐ちゃん」にお勤めご苦労様のクリックお願いします。

そして、まるで高貴な愛玩犬のようにモノを使い捨ててしまうハルさんの性根をテチッと叩き直してください。
