ハルさんの体に2箇所ほどかさぶたが出現したのだ。
既にかさぶたになっているので、皮膚そのものに特に変わったところはないように見えた。
しかし先日のダニ事件のこともあるし、フィラリアの薬をもらって狂犬病の注射をしなければならない時期だったので雨の中ハルさんを抱えて出かけていく。

ハルさんが病院に抱く感情は複雑である。
病院の入り口まで来ると、グイグイとリードを引っ張り(←もちろん叱られる)入っていこうとするし、待合室では他の患蓄(←主に猫)にシーッとウザがられるほどのはしゃぎっぷりである。
病院とはいえ仔犬の頃からお泊りといえばいつもここだし、友達のアニーはいるし、スタッフの方は優しいし、ハルさんにとってはある意味第二の故郷ともいえる場所なのだ。
しかしいざ診察室に入ると、ガクンとテンションが下がる。
仔犬の頃は診察室でもそれなりに機嫌良くしていたのだが、年をとるにつれ、徐々に嫌悪と恐怖が増してきているようだ。

1歳頃にはシオシオと耳が垂れるようになり、
1歳半を過ぎると、呼吸が荒くなり、
2歳を過ぎた今では、鼻水が出始めた(←何故)。
それにしても今回は皮膚を見てもらい(←やはり既に自己完結していた)、狂犬病の注射を打たれ、フィラリア検査のために血を抜かれるという、ハルさんにとってはなかなかの試練であった。
吠えもせず暴れもせず、ただもうひたすら鼻水を垂れ流して(←だから何故)、ハルさんはこの難局を乗り切った。
反応についてはいろいろ言いたいことがあるけれど、とにかく良く頑張ったと思う。
先生も褒めてくれた。
「いやぁ、注射とかをするとね、やっぱりイヤだから、
みんないろいろ抵抗するんです。
コーギーのコはとくにがんばりやさんが多いですね。
え?あぁがんばるってのは抵抗をってことですよアハハ。
でも、ハルちゃんはえらいです。
ハルちゃんには、理性があります!」

すると夫が隣ですんとっきょうな声を上げた。
「理性!?そんなのあるんですか?」
恐らく犬であるハルさんと、理性という二文字が結びつかなかったのだろう。
でも先生は深々と頷いた。
「あります」
ではその腕の傷はどんな理性のない生き物にやられたんですか。
今日はまた一段とエライことになってますけど。
という台詞が喉元まで出かかったが、なんとか飲み込む。
ウチの先生の手にはいつも引っかき傷が並んでいる。
時々、顔にも傷をつくっているときがある。
他の獣医さんに会ったことがないので、これが獣医というものの証なのか、診察を終えると必要もないのに患蓄を膝に抱いて飼い主に話をするウチの先生固有の問題なのかはわからない。
それでもいつもはせいぜい手首まわりで収まっているのだが、この日はひじあたりまで伸びていた。
いったいどんなスペクタクルなバトルがあったのか、気になるところである。
考えてみれば獣医師とは因果な職業だ。
動物が好きで、動物を助けたくて、一生懸命勉強して、獣医になった途端、動物に嫌われる。
ウチの先生も、おそらくはそんなジレンマを抱えているのだろう。
しかし獣医師が、とくにウチの先生がいなくなったら、私たちはとても困る。
ハルさんだってきっと困る。

先生にはこれからもがんばっていただきたいと、心から願っているのである。
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