言い出したのは、私(Y)である。
妻(M)は少し怪訝な顔をしたような気がしたが、二人と一匹で行くことになった。
お寺の梅はまだ七分咲きというところであったが、結構な人が見物に訪れていた。
中には、早くもビニールシートを広げて花見に興じるオジサマ(様?)達の姿もあった。
オジサマたちは、いろいろな意味で、フライングであった。
「位置について」の掛け声とともにスタートダッシュを切る短距離ランナーみたいな感じだ。思わず写真を撮ってしまった。
ハルさんは途中、犬好きの子供に撫でられたりしながら、それなりに楽しんでいたようであったが、
私が何度も立ち止まり、梅林を撮影するものだから、妻(M)に抱き上げられて退屈そうにベンチに腰掛けていた。
そんな時、相変わらず怪訝そうな顔をしていた妻(M)が口を開いた。
「なあ」
「ん?」
「たいそう熱心に梅の写真撮ってるけど、花とか興味あったっけ?」
「いや……ないな」
「そやろ?花の名前とか全然覚えへんもんな」
「せやなー。実はどう撮ったらいいか全然分からんねん」
「え?さっきからバシャバシャ撮ってるやんか」
「ああ、まあ一応適当に」
「……それはハルちゃんがクンクン匂い嗅ぐふりしてるような感じ?」
「そうそう!うまいこと言うなー」
「……」
「……帰ろか」
こうしたやり取りを経て帰途についた妻(M)は、ややすっきりした顔をしていたような気がする。
一方、「鼻が効かない」ことが既成事実化されつつあるハルさんであったが、暢気な顔で散歩を楽しんでいた。
そして、帰宅後。
飼い主の興味は、にわかカメラマンが撮影した見栄えしない梅の写真ではなく、ハルさんがマンション内で出会った柴犬「こてつ君」と絡んだ写真に集中していた。
「こてつ君」もハルさんと同じく深夜散歩組らしく、夜更けに何度か会ったことはあるのだが、こんな日の照っている時間に出会うのは初めてである。
二匹の相性は、決して悪くはないと思われるので、出会うたびに近づけてみるのだが、いつもぎこちない感じだ。
だが、こてつ君は、とてもスレンダーですっきりとしたスタイルの柴犬である。
人間だったらよっぽどの二枚目になるだろう。
そんな二匹が顔を突き合わせている写真を見て、思わず声を出してしまった。
「ハルちゃんのほうが顔小さいんとちゃう!?」
実は、ハルさんの顔がでかいことが気になって仕方がない飼い主なのであった。
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まあ、コギ族だから顔がでかいことは仕方がないのでしょうけれど、ついつい他の犬と比べてしまいます。
でもこれで、柴犬よりは(ほんのわずか)小顔かもしれないと、勇気が湧いてきました。
ついでに、ハルさんの足が普通の犬並みに長くなるように、テチッとクリックお願いします。
晴れて足長になった暁にはコギ族を卒業する予定ですので悪しからず。