新しいおもちゃを買ってきて与えてみると、しばらくはプイプイ遊ぶが、数十分もすると
「これはもういいわ。次の新しいやつ頂戴」
と言わんばかりに買ってきたばかりのおもちゃを放置プレイし始める。
なので、おもちゃが即効で破壊されるいうことはないのだが、放置されたおもちゃの姿を見ていると、いたたまれない。
そんな飽きっぽいハルさんだが、ゴハンだけは別格である。その執着っぷりは凄まじい。
ひとたびゴハンが絡むと、冗談の一切通じないタイヘン扱いづらい犬に変貌し、↓のような笑顔などかけらも見せなくなってしまう。

そんなハルさんの変貌キーワードは「ゴハン」と「お腹すいた」。
これは、ゴハン前に
「ハル、お腹すいた?ゴハンにしようか」
と飼い主が声をかけていることが原因と思われる。
たとえば
「そういえば、ハルのゴハン買いに行かなあかんな」
とか
「もうこんな時間か。お腹すいたなー。何食べに行こう?」
とかいった感じで、ゴハンの時間以外にうっかりキーワードを口にしようものなら、リビングでゴロゴロしていたハルさんはガバッと跳ね起き、舌なめずりをしながら小走りで台所へ向かう。
台所を出たり入ったりしながらゴハンの用意を待つハルさんの表情は真剣そのものである。

焦った飼い主が「あ、今のゴハンはハルのゴハンのことやなくてウチらのゴハンのことで」と言っても手遅れである。ハルさんは全く聞く耳を持たない。
むしろ、再び三度も繰り返されたキーワードのみを聞き取ったハルさんの興奮度はうなぎのぼりに上昇する。
こうなるともう何を言っても無駄なので、飼い主はハルさんを説得するのを諦め、放っておく。
ハルさんは相変わらず台所に出たり入ったりしている。それ以外にハルさんができることはないのだ。ハルさん、この家では無力な存在なのである。
期待感いっぱいでソワソワしていても一向にゴハンが出てこないと知ったハルさんは、やがて飼い主の正面に鎮座し、ジト目で見つめてくる。

「ちょっと?今、ゴハンって言ったわよね。
ゴハンということはワタシのゴハンしかありえないのよ。
それなのに、どうしてアナタはそんなところでゴロゴロしているのかしら?
ねえ、早く出しなさいよ。こっちだって慈善事業でやってるわけじゃないのよ!」(←何を?)
その目は明らかに不満そうな色をたたえている。
しかし、残念ながらハルさんに見られて動じる人間は、この家には存在しない。けれどハルさんはこれ以上のアクションを起こすことができない。さらにジト目攻撃が続く。
「何なのよ。ワタシのゴハンじゃないのなら、気安くゴハン、ゴハン言わないでよね。
こっちはゴハンとは切っても切れない運命共同体なんですから!
ゴハンを出せないのならちょっとしたオヤツでもいいから何か出しなさいよ。さあ、さあさあ!」
とでも言わんばかりにその場を動こうとしない。こんな時のハルさんは実にしつこい。実は粘着気質なのである。
このような経験を経て、我が家ではキーワードの使用が禁止されることになった。
「ゴハン」は「GHN(ジー・エイチ・エヌ)」あるいは「例のアレ」へと、その姿を変え、隠語が飛び交う家庭となってしまったのである。
隠語家族の完成であった(←意味不明)。
だがやはり、「ゴハン」のことは「ゴハン」と言いたいのが人情である。奥歯に物が挟まったような代替語では飼い主もストレスが溜まってしまう。
そこで本当のハルさんのゴハンの時間には、一日分の「ゴハン」を連呼してストレスを発散することにしている。
「ハル、お腹すいた?」と言うと、ガバッと起き上がるハルさん。
そこへすかさず、
「ハル、ゴハンやで!」
「ゴハン、ゴハン」
「ゴハンの時間ですよ」
「よかったなー。ゴハン食べれるなー」
「ゴーゴーゴ、ゴーハン♪ゴゴゴゴ、ゴーハン♪」
「ゴーハーン!!」
もうやりたい放題の飼い主を真剣な眼差しで見つめるハルさんなのであった。

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本日も「ゴハン」の集中砲火を浴びながらゴハンにありついたハルさんでした。
明日は、下のバナーをテチッと押していただいた回数分、連呼するつもりです。(←ハルさん大迷惑)
