ハルさんの散歩を兼ねて駅までMを迎えに行こうと、ハルさんを抱き上げてマンションのエレベーターに乗り込む。
余談だが、ウチのマンションのエレベーターは斜めに動く。
初めて乗る友人達は「おおっ。スゲエな」と驚嘆の声をあげるが、何のことはない、山の斜面にマンションが建っているだけのことである。
ちょっと田舎なだけである。
ちなみに、ハルさんはエレベーターに何の興味も示さない。
抱っこされるとテンションが下がるのが常なので、「これ、斜めに動くの?凄いわー」てなリアクションなどあるはずもなく、何の感慨もない表情をしたハルさんを乗せて、エレベーターは1階へ到達する。
すると、そこに、年のころなら30代半ばから後半とおぼしきオヂサンがエレベーター待ちをしていた。
今まで全く出会ったことのない人であるが、一応、同じマンションに住まう者の礼儀として挨拶は交わしておかねばならない。
エレベーターの扉が開き、「こんばんは」と言おうとしたその瞬間であった。
なんと、そのオヂサンは私の腕に抱かれているハルさんを発見するや否や、満面の笑みを浮かべて
「あ、ハルちゃんだ。ハルちゃーん

とギャル(←死後)のように手を振ったのだ。
今まで、どちらかというとむすっとした顔をしていたのに。
そんなに犬が好きなようには見えないのに。
何故?
誰なんだ、この人は!?
「アナタ、一体誰?」
とのたまう女性が登場する、8710(ハナテン)中古車センターのCM(←古くて狭くてすいません)が、頭の中をグルグルと駆け巡る。
混乱してパンク寸前のちっぽけな私の脳。
しかし、ハルさんを知っているということは、ハルさんはこの人に会ったことがあるはずだ、と思い直し、ハルさんの様子を伺うが、当のハルさんはきょとんとしたままである。
「あ。ど、どうもー」
と、日本人らしく曖昧な笑顔を浮かべつつ、手を振り続けるオヤジギャル(←死語)と擦れ違い、マンションの外へと出る。
夜風に当たると少し落ち着いてきたので、冷静になって考えてみた。
ハルさんのリアクションが薄いのは気になるけれど、きっと、ハルさんに会ったことのある人に違いない。
そして、私が知らないということは、飼い主の片割れ、Mは知っているはずだ。
きっとそうに違いない。
そこで、駅へと向かい、ホームから出てきたMを捕まえて問い詰める。
オヂサンの風貌、年恰好を伝え、「あの男を知っているはずだ。知らないとは言わせないぞ。吐け、吐くんだ。」とオトしにかかるが、Mは知らないの一点張りである。
家に帰り、カツ丼を食べさせてみたが、答えは変わらない。
どうやら本当に会ったこともないようだ。
しかし、ウチは共働きだし、同じマンションで知っている人といえば、ごくごく限られてくるのだが、その中に該当者と思われる人はいない。
では、何故あの人はハルさんを知っているのか・・・・・・?
【読者への挑戦状】
さて、ここで飼い主Yは明言する。
当ブログにおいては、真相の発見に必要な事実の全部を、読者の前に提示した――はずである。読者諸君がこれまでの叙述を、周到かつ綿密に精読されるときは、犯人が一体誰なのか、を誤ることなく予想なさる・・・・・・と。
え?こんなテキストだらけのブログを全部読むのはしんどい?
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