なんの因果か、遠く宝塚の共働き夫婦のもとで暮らすことになったわけだが、そうなると便宜上、名前というものが必要になる。
本名とはいえ、常に「ゴハンちゃ〜ん」と呼びながら一緒に暮らしていくのは難しい。
で、名前をつけようという話になるのだが、実は「ハル」と決まるまでには(わりと)色々あった。
そもそも共働き夫婦のペットとしては、ハルさんは2代目である。
初代はひきこもりのジャンガリアンハムスター。
姉たちにいじめられるので別ケージに隔離されていた暗い過去をもつ男子である。名前はハムどん。
その名のとおり、小さな体の約9割が食い意地でできていた。
にんじんを食らう男、ハムどん。後ろ足が気をゆるしていない感じだ。
そんな彼の名前が決定したときの会話はこんな感じであった。
夫「ハムスター、名前何にする?」
妻「私、考えてた名前あるねんけど」
夫「あ、俺も俺も!」
妻「なに?」
夫「ハムどん。妻は?」
妻「ニイハム」
お互い、当時のテレビ番組(笑う犬の生活?)に出てくるエセハムスターの名前そのままであった。
想像力が貧困なのである。ウッチャン(ハムどん)かホリケン(ニイハム)か、しばらく見詰め合った末、結論が出ないと判断した夫が言った。
夫「……じゃんけん、しよっか」
妻「……うん」
というわけでこのときは、見事夫が勝利し、ハムスターの名前は「ハムどん」に決定した。
しかし結局、「ハムどん」という名ほとんど機能せず、二人そろって「ハム〜」と呼んでばかりだった。
唯一機能したのがハムどんを動物病院に連れて行ったときだが、このときは
「山田(仮)ハムどんちゃ〜ん、診察室にお入りくださ〜い」
と呼ばれてたいそう恥ずかしい思いをし、二度とペットにこんな名前はつけるまいと誓った。
で、コギさんがやってきた。
夫「コギ、名前何にする?」
妻「ん〜、コギ?」
夫「わかるけどさ、またその名前が動物病院で呼ばれるねんで」
妻「山田コギちゃ〜ん?」
夫「コーギーにコギってそのままやん!って診察室中の人が心のなかでツッコミいれると思うねん」
妻「う〜ん。じゃ、コギィ」
夫「確かにちょっと愛称っぽくなってるけれども」
妻「困ったなー」
夫「なー」
そうなのである。まだ見ぬコギに恋焦がれる時間があまりにも長かったせいで、二人して「コギが」「コギを」「コギと」「コギに」とコギコギコギコギ言い続けたせいで、「コギ」以外の名前が思いつかなくなってしまったのである。
夫「……コギ子?」
妻「……コギ江?」
もうグズグズなのである。
夫「……ちょっとこれ、宿題な」
妻「……ハイ」
次の日、提出された二人の宿題は。
夫「ファン」
【理由】
・呼びやすい
・ユニセックスな感じがする
・ファン・バステン(←オランダの元サッカー選手らしい)と同じ名前だから
妻「ハル」
【理由】
・呼びやすい
・ユニセックスな感じがする
・重力ピエロ(←伊坂幸太郎の小説)の登場人物と同じ名前だから
結局、あの頃(ハムどんvsニイハム)から何も成長していない二人なのであった。
しかしハムスターのことで気を使ってくれたのか、今回は無条件で夫が譲ってくれ、コギの名前はめでたく「ハル」と決まった。
ガムを食らう女、ハルさん。前足がイマイチうまく使えていないが食う気は満々。
しかし、冬生まれなのに「ハル」という理不尽な名前をつけてしまったせいで、「春生まれなんですね?」という質問に、いつもうまく答えられない飼い主なのであった(ションボリ)。
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