一応、このブログの主役だ。
しかし、実のところ、一度も飼い主は「ハルさん」と呼んだことはない。
まあ、「ハルさん」はペンネームみたいなものである。
あるいは、芸名といったところか。
「ハルさん」がウチに来た当初、我々は「ハル」と呼んで可愛がり、そして悪さをすると叱った。
初めて犬を飼う共働き夫婦は、「しつけ」に対して非常に神経質になっていたと思う。
マンション暮らしだし、昼間は留守番をしてもらわないといけないので、飼い主の言うことをきちんと聞ける犬に育ってもらわないと困るという思いが強すぎたようだ。
おのずと、ハルさんに対する態度は厳しくなり、ちょっと歯が手に当たっただけでハルさんは「ゴルア砲」を浴びせられたりしたものである。
もちろん、「イイ子。イイ子」と言って、叱った後は褒めていたのだが、叱りっぷりが度を越していたのか、ハルさんの反応はイマイチで、褒められているという実感はなかったのかもしれない。
※ちなみに、手をあげたことは一度もありません。
さらに、飼い主は誰かを叱ることに馴れていなかったため、「コラ!」ではなく「ハル!!」と名前を叫んで叱ることも、ままあった。
「ハルさん」にとって、「ハル」はゴハンの時に呼ばれる言葉でもあり、叱られる時の言葉でもあったのだ。
だから、幼少の頃のハルさんは、「ハル〜

そんなある日、飼い主とハルさんの関係を一変させる出来事が起こった。
ロミオ君との出会いである。
正確に言うと、ロミオ君のお母さんとの邂逅だ。
ロミオ君のお母さんだから、ここではモンタギュー夫人(仮名)と呼ばせていただく。
前にブログで書いたように、壁越しの愛を実らせ、ようやくロミオ君と巡り合ったハルさんだが、実はロミオ君以上に虜になっていたのが、このモンタギュー夫人だったのだ。
耳をペターンと寝かせ、モンタギュー夫人にまとわりつくハルさんに対し、夫人は「ハルちゃーん

この言葉に反応し、さらに嬉しそうな様子を見せるハルさんの姿に、飼い主は呆気に取られた。
こんな姿、飼い主の前で見せたことがあろうか。否、ない。
えーっと、確かこれって反語ってやつやな、としょうもないことを考えていたとき、ある考えが閃いた。
Mの様子を見てみると、Mも同じことを思いついたようだ。
モンタギュー家との逢瀬を終え、家に戻ったハルさんに対し、早速試してみる。
「ハルちゃーん

と猫なで声を出し、撫でまくってみた。
すると・・・ハルさんの耳がペタリと倒れ、嬉しそうに興奮しているではないか!
おおっ。これはイイ。
と調子にのって
「ハルちゃーん

を連発していると、
「あれ?この人はモンタギューさんじゃない!」
と突然ハルさんは我に帰り、そそくさとその場を離れた。
しかし、この日以来、味を占めた飼い主夫婦によって
「ハルちゃーん

攻撃は続けられ、現在、ハルさんは
「ハルちゃーん」
と呼ばれただけで嬉しそうな顔をするようになった。
そんなわけで、モンタギュー夫人の多大な影響のもと、ハルさんの本名は「ハルちゃん」となった。
もちろん、褒めるときは「イイ子」ではなく「おりこーぅ」である。
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「ハルさん」と呼ばれても反応しませんが、「ハルちゃん」と呼ばれると一目散に駆けて来ます。初対面の人であっても。
そんなハルさんに「おりこーぅ」のテチをお願いします。
