ドライド・ラムラング。GREEN DOGで購入したお高級な羊の肺である。
しかし無条件には差し上げられない、と家訓で決まっている。
今回は何をしていただこうか。オスワリ?ハイタッチ?
そんなことを考えながらハルさんを呼ぶ。
笑顔で駆け寄ってくるハルさん。
「ハルー。おりこー。さてと、イ、あっ」
握力13の飼い主、ラムラングを落としてしまう。
ラムラングは床に着くが早いか、ハルさんの口の中へ吸い込まれていった。
普段、散歩中に段差で足を踏み外す生き物とは思えない驚異のスピードだった。
あせる飼い主。
「ヒー、ハ、ハル、マダー!!」
マダ。かつて一度も発令されたことがないコマンドである。ハルさんにわかるわけがない。
しかし飼い主の鬼気迫る勢いを察したのか、ハルさんは動きを止めた。
明らかにラムラング(←全長3センチ)を口内にとどめたまま、見つめあう人と犬。
(カリッ)
ひー。噛んだ!今ちょっとラムラング噛みましたよ!
しかし今から吐き出せというのもあんまりかわいそうだ。
だいたいシッコのごほうびなのだから、既に食べる権利は獲得しているはずだ。
でもこういうのがクセになったら困るし。それに家訓、家訓が……。
と、とにかく何か芸をすればいいわけで。そう!そうよねハルさん!!
「ハル?ゴ、ゴロン……」
口がへんに膨らんだままゴロンするハルさん。
(コリッ)
ヒー。い、今のは!今のはちょっと寝転がったから!なんか重力が!仕方がなかったのよ〜。
なぜか幻の第三者に向かって言い訳する飼い主。
……もういいのかしら。家訓は満たされたのかしら。そもそも家訓て何なのかしら。
そんなことをぶつぶつと考えていると、
(ペッ)
色んな意味であきらめのいいハルさんは、ゴロンした状態でラムラングを吐き出した。
飼い主、なんだかうなだれる。
でもすごくイイコだったわけだから、無理矢理テンションを上げてほめまくる。
「ハルちゃ〜ん、おりこう〜。もんのすごくおりこう〜。食べていいよー、ヨシ!ハル、ヨシ!!」
こうして、たいへんややこしい過程を経て、ラムラングはようやくハルさんの胃袋に納まったのであった。
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優柔不断な飼い主に振り回された哀れなハルさんに慰めのテチをお願いします〜。
