しかも、ハルさんは飼い主の姿が見えなくてもオスワリを維持できるようだ。
ハルさんの前にゴハンを置いて、オスワリさせた後、ハルさんの水を取り替えるのが通例となっているのだが、台所でペットボトルの水を捨て、新しい水を入れている間、壁を隔てているので、ハルさんから飼い主の姿は見えない。
しかし、水を入れ替えたペットボトルを水飲み場に装着しながら、ハルさんの様子を伺うと、オスワリの姿勢は飼い主が消える前と変わっていないし、ゴハンの量も減っていない。
何より、床にポタポタと垂れ落ちているヨダレの跡が、ハルさんの真摯な姿勢を物語っている。
「何分マテ出来るんやろうか?」
という、人として当然持つべき好奇心が頭をもたげたこと、一度や二度ではないが、こんな真剣な眼差しに見つめられ、マーライオンのように垂れ流されるヨダレの洪水を浴びせられながら、長時間マテを維持させる気力はないし、ちょっと非人道的な気もするので、試してみたことはなかった。
そんなある平日の晩のこと。
Mはまだ帰ってこないし、久しぶりにトマトソースでも作ってみるか、と気まぐれに思い立ち、玉葱をみじん切りにして炒めていた時、ふと足元を見ると、生真面目な顔をしたハルさんの顔がそこにあった。
ん?どうした?と思い、時計を見ると既に夜の10時を廻っていた。
なるほど、お腹がすいたのか、とハルゴハンの用意をして、水を取り替える。
ハルさんも、「やっとゴハンね」という顔をして嬉しそうだ。
と、そのとき。
ジューーッ という音が台所のほうから聞こえてきた。
ああっ!玉葱が焦げてしまう!!
と一目散に台所に駆け戻る飼い主Y。
ふう。焦げ付かなくてよかったー。
でも、もうちょっと炒めたほうがいいかな。
さて、後はにんにくを入れてと。
あ、トマトの皮をむくためのお湯を沸かさないと。
ん?白ワインって残ってたっけ?おお、あったあった。
煮込んでいる間にシメジとベーコンも切っておくか。
パスタを茹でるためのお湯はたっぷりいるから、早めに沸かしておく必要があるな。うんうん。
飼い主Y・・・・・・ハルさんの状況↓を完全に亡失。
数十分後・・・
さて、ソースはできたし、後はMの帰ってくるタイミングを見計らってパスタを茹でるだけだな。
ん?もうこんな時間か。
ハルさんもそろそろゴハン食べないと・・・・・・ってあれ?
ハルさん!?
一目散にハルさんのケージに駆け寄る。
健気なハルさんはオスワリをして待っていましたよ。
足元にヨダレの湖を創りながら。
噂に名高い砂漠を移動する湖がこんなところに出現したのか、という感慨を覚える暇もなく、もちろん写真を撮る余裕もなく、絶叫する飼い主Y。
「ヨシ! ハル、ヨシ! イイコだーっ!!」
[結論]
ハルさんは20〜30分、オスワリしながらマテを維持できる。
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気丈に待ち続けたハルさんに頑張ったね、偉いよ、の慰めテチをお願いします。

明日の記憶しかない駄目飼い主には、この鬼畜がっ!と怒りを込めてドスッと。
