「ハル!キャリー!」(←コマンドのつもりらしい)
というむなしい叫びが続いている。
バッグが来た当日は同情心などカケラも湧いてこなかったが、本日で3日目、震え混じりで時々ヘンに裏返りだした夫の声は、同情というより哀愁を誘う。
実は夫がこのバッグを欲しいと言い出したのは、もう半年も前のことになる。
犬の雑誌でイタリア人(←想像)ギャルがこのバッグを抱えて満面の笑みを浮かべている写真を見て以来、すっかりこのバッグに夢中になってしまったのだ。
「なあ妻!妻!これよくない?すごくよくない?」
ちなみにギャルの持つバッグにはチワワが入っていた(と思う)。
そもそもギャルが笑顔で抱えられるようなバッグにウチの海獣が入るわけがないので、その旨をできるだけ優しく丁寧に夫に伝えたつもりだったが(そして素直に私の意見に耳を傾けているように見えていたが)、実はちっともわかっていなかった。
時々思い出したように雑誌を持ち出して
「なあ妻!妻!これよくない?すごくよくない?」
を繰り返す。こういうとき夫はとんでもない根気と集中力を発揮する。
かなりしつこい。もう持病の発作な感じだ。
こういう場合たいていこちらが根負けするのだが、今回ばかりはそうはいかない。安い買い物ではないのだ。
で、発作が起きるたびに根気よく言い聞かせていたのだが、先日私がギルガメ(FF12)と死闘を繰り広げている隙にインターネットで注文されてしまった。
Y 「なあ妻!妻!これよくない?すごくよくない?」
M 「……えー……」
Y 「Lサイズがあるねん、Lサイズ!」
M 「……へー……」
Y 「重量10キロまでオッケーやって!」
M 「……へー……」
Y 「んもうハルにぴったり!」
M 「……んー……」
Y 「な!」
M 「……んー……」
Y 「買っていい?」(←ここだけ小声)
M 「……んー……」
Y 「やっほう!妻ありがとー(ポチッ)」(←「注文」ボタンを押した音)
それにしてもコレ、いったいどうするつもりなんだろう。
高い授業料だ。ほんとうに。